2章5話 勉強会

「うー……全然わかんなーい!」

「あさひ、早いよ。頑張ろう?」

「オレもわかんねえわ、てかこれやる意味ある?」

「水無瀬くんまで? もう!」


 6月末の期末テストに向けて、私たちは放課後の教室で勉強会をしていた。

 テスト期間中は部活が停止になるから、普段演劇部の私、硬式テニス部で頑張っているあさひ、そして帰宅部の水無瀬くんというメンバーで勉強会をすることができている。

 水無瀬くんが森原くんも誘ったけど、今日は用事があるからフラれた、って落ち込んでた。


「みなしゅんはちょいちょい休んでたからってのもあるっしょ」

「あ、そうだよね。ノート写す?」

「サンキュー、助かる」


 水無瀬くんは私のノートを写し始めた。

 大柄な体格に、スッと伸ばした背筋。

 腕まくりしたワイシャツから覗く腕はしっかりしてて、シャーペンを持つ手はごつごつしている。

 

 ——たけるとは、全然違うな


 去年は、図書室で健に勉強を教わってた。

 そこまで太くない、でも男子だなって思う腕。

 少し小さめで、厚みのある、温かい手。

 ちょっとしたことで、すぐ健のことを思い出してしまう。


「さくらちゃん? これ返そうか?」


 我に返ると、水無瀬くんが私を見ていた。

 手が止まっていたみたい。

 あさひも私を覗き込む。


「あ、ごめんね、違うの! 去年は彼氏に教えてもらってた、なぁ、って……」


 言い訳を間違えた——私は顔から火が出そうになる。


「なんだ、惚気か」

「ひゅー! その光景見たかったなー!」

「か、からかわないで! もう教えないよ、2人とも!」

「「ごめんなさーい」」


 綺麗に重なる謝罪の言葉。

 私たちはけらけら笑った。


「——よし。さくらちゃん、ノートありがとう」

「どういたしまし、て」


 貸していたノートが、水無瀬くんから返ってくる。

 その時改めて目に入った、水無瀬くんの手。


 ——これも、健と違う


 水無瀬くんの指の、第二関節。

 綺麗に横に並んで、怪我の跡が残っていた。

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