第1話の冒頭、血まみれで何かをなぎ倒しながら「どこにいんだよ、銀城」と呟く場面から始まり、「順番に話すよ」と語り直す構成が巧い。これから始まる物語の熱量と切実さを先に提示して、読者を引っ張り込む。
何より設定の逆転が面白い。異世界転移もので主人公は通常、「転移させられる側」か「召喚される側」だ。この作品の伊織は違う。消えた幼馴染を取り戻すために、渡界現象を研究する学園に入学した「追いかける側」だ。その動機の純粋さ——兎が死んで一緒に泣いたこと、あいつが進路を語るときの「どこまでも先のほうを見てるみたいな、変な光」を追いかけていたこと——が、ジャンルもののお約束を素直に受け入れさせてくれる。
第2話の世界観構築も手際がいい。ピラーの警報が地震速報みたいに日常に馴染んでいる、という一文で203X年の空気が一気に伝わる。法則性もなく、対策もできないまま少しずつ受け入れていった人類の無力感を描くのに、無駄なページを使っていない。
そして入学初日に、探すはずだった銀城朱里が帰ってきた——しかし「俺を見て、絶望したみたいな顔をしていた」。この一行が第1話のラストとして機能する重さは、短い語り口が積み重ねてきた伊織への共感があってこそだ。
あの光は何で、絶望はどこから来たのか。続きを読まずにはいられない。