この作品は、明治維新が起こらなかった日本という歴史IFの面白さだけでなく、「武士としてどう生きるのか」というテーマを、主人公の葛藤を通して丁寧に描いている作品だと思います。
特に印象に残ったのが、連続辻斬り事件で犯人となった春成と清雅が対峙するエピソードです。剣の腕では勝っていながら、人を斬る覚悟を持てない清雅と、過去に人を斬ったことで人生そのものが壊れてしまった春成。この二人を対照的に描くことで、人を斬ることが当たり前に求められる武士社会の重さが自然と伝わってきました。
もう一つ印象的だったのが、戦国時代に何も成せないまま死んだ落武者の妖とのエピソードです。力で倒すのではなく、その人物が何を願い、何のために戦ったのかを清雅が認めることで救われる展開には、彼の「人を斬れない」という性格が単なる弱さではないことがよく表れていると感じました。
明治維新が起こらなかった世界、西洋文化の禁止、江戸警察、陰陽師や妖といった設定も、それぞれが単なる飾りではなく、清雅が自分の生き方を考えるための要素として物語の中で機能しています。
序盤までの紹介となりますが、清雅がこれから「武士」と「陰陽師」という二つの立場にどう向き合っていくのか、歴史と妖が好きな方にはおすすめの物語です