人と人とは、どこまで分かり合えるのでしょう。
同じ言葉を聞いても、感じ方は違う。
誰かにとって何でもないことが、別の誰かにはとても苦しいことかもしれない。
そんな「違い」を前にした時、私たちは時に、分からない相手を「変わっている」「面倒だ」と遠ざけてしまいます。
けれど本作『真理を理解つ』が描くのは、その反対です。
分かり合えないから、離れるのではない。
分かり合えないからこそ、知ろうとする。
何が苦手なのか。
何なら大丈夫なのか。
なぜそう感じるのか。
どうすれば、お互いが無理をしすぎずに一緒にいられるのか。
「一緒に隣を歩く方法を探したい」
この言葉こそ、本作を象徴するものだと思います。
物語の中心にいるのは、周囲への気遣いを忘れない蘇芳理人と、自分なりの決まりや感覚を大切にして生きる小早川真人。
二人は最初から完璧に分かり合えるわけではありません。
知らないから戸惑う。
間違える。
言葉が足りなかったり、すれ違ったりする。
それでも、勝手に相手の気持ちを決めつけるのではなく、尋ねる。
伝える。
謝る。
そして、また少しだけ近づいていく。
その積み重ねが、本当に優しいんです。
そして素晴らしいのは、この「隣を歩く」というテーマが、二人だけの関係に留まらないことなんです。
家族にも、友人にも、それぞれの事情や痛みがあります。
誰かが傷ついたからといって、その人が必ず正しくなるわけではない。
反対に、誰かを傷つけてしまったからといって、その人の人生すべてまで否定してしまうわけでもない。
人は弱く、時には嫉妬し、間違え、取り返せないことをしてしまう……。本作はそこを綺麗に取り繕いません。
傷つけたことは消えない。
謝ったから全部許されるわけでもない。
それでも、自分の過ちを認め、その後悔と向き合い、「これからどうするか」を選ぶことはできる。
そんな姿を丁寧に描いています。
中でも、私の心に強く残ったのが「後悔」についての考え方でした。
後悔という言葉には、どうしてもネガティブな印象があります。
「あの時こうすればよかった」
「もっと優しくできたのではないか」
過去を思い返し、自分を責めてしまう。
けれど、この物語は教えてくれます。
後悔できるということは、あの時には見えなかったものが、今は見えるようになったということでもある。
やり直したいと思えるのは、その時の自分より少しだけ視野が広がり、心が成長したからなのかもしれない。
過去そのものは変えられない。
だからこそ大切なのは、後悔を後悔のままで終わらせないこと。
そこから何を知り、何を受け取り、次にどう生きるのか。
後悔は、ただ自分を傷つけるだけのものではなく、未来へ進むための「意味のある振り返り」にもなれるのだと、本作を読んで感じました。
そしてもちろん、そんな深いテーマだけではありません。
理人と真人が少しずつ互いを知り、距離を縮めていく姿は、とにかく可愛くて、温かくて、何度も頬が緩みます。
不器用な言葉。
何気ない気遣い。
小さな冒険。
ほんの少しの嫉妬。
そうした日常の一つ一つが積み重なって、「この人だから特別」という気持ちへ変わっていく過程が、とても愛おしくて。
恋愛物語としてのときめきと、人と人が理解し合おうとする物語としての深さ。
その両方が、無理なく一つになっています。
「相手を理解する」とは、相手のすべてに賛成することではない。
「寄り添う」とは、自分を消して相手に合わせ続けることでもない。
違う人間同士だからこそ、互いの歩幅を確かめながら、隣を歩ける場所を探していく。
簡単ではありません。
きっと何度も失敗するはずです。
でも、だからこそ……人との繋がりを諦めなくてもいい。
『真理を理解つ』は、そう静かに語りかけてくれる物語だと思います。
誰かとの違いに戸惑ったことがある人。
人間関係で「あの時、もっと違うことができたのでは」と後悔したことがある人。
自分自身のことを、もう少し大切にしたいと思っている人。
そして何より、温かくて優しい物語が好きな人へ。
ぜひ読んでいただきたい一作です。
読み終えたあと、あなたにとっての「誰かと隣を歩くこと」を、きっと少し考えてみたくなると思います。
大学生の主人公が、講義室で見かけた男子。妙に気になって近づきます。そばにいる彼女は不満ですが、二人は徐々に関係を深めていきます。その男子はルーチンにこだわって生活し、会話はやや斜め上という、とりつきにくいタイプ。それでも主人公は持ち前の積極性で近づき、孤独そうな彼に大きな影響を与えていきます。二人の行方はどうなっていくのでしょう??
同性の話というのはとりあえず置いておいて、ヒューマンストーリーとして感動する物語の予感が強くあります。作者の過去の作品も青春の初々しい恋愛やほろ苦さを見事に書いていました。その筆力、丁寧な作品作りには敬服します。
ぜひ各話の応援コメントも見ていただきたい。特にある読者と筆者のやりとりはこの物語をさらに魅力的にしています。文字量ですぐわかります(笑)、二人ともキャラへの愛情がとても深いのです。二人ともうらやましい感受性です。
BLや百合は女性の作家や読者が多いのですが、その理由が分かりました。女性は男性よりも人間がとても好きなんです。性別の組み合わせは単に好みや設定上の理由で決まるだけで、女性は本当に人間のドラマを書きたいし読みたいんだな、と思いました。
実はまだ5話までしか読んでいないのですが、これを機に男性を含んだ多くの人に味わっていただきたいヒューマンストーリーです。ぜひ一緒に堪能しましょう!