本物の生き物が稀になった近未来を舞台に、老いた犬と、十年ぶりに再会した少年と少女の夏を描く六話完結の作品です。時間の積み重ねの中で、言葉にならないものがひとつの命に宿っていたこと——それが少しずつ伝わってくる書き方が、この作品の誠実さだと感じました。終わりの時間でありながら、何かが始まっていく夏でもある。悲しみと始まりが打ち消し合わないで、どちらも本物のまま並んでいる。そういう余韻の残る物語が好きな人には、届くと思います。