知ることも、届けることも、きれいな形では終わらない。それでも、手を伸ばし続ける。失恋と自己嫌悪を入口にしながら、語り手が、もう一度誰かへ向かおうとする道のりを、丁寧に見せてくれます。出来事そのものより、揺れながらも動いていく人物の内側を追うような感触です。序盤の言葉や場面が、後から別の重さで戻ってくる。何気ない一文が、読み進めるほど違う面を見せてきます。「届いた」とも「届かなかった」とも言い切れない余韻が、読後もしばらく残ります。