前半の「一見すると牧歌的な昭和の学生生活」の描写に紛れ込ませた、母親の不自然な態度や教師の不穏な言動といった「社会的な毒」の描き方がまず見事です。
そこから後半、倉庫に閉じ込められた小村正彦を襲う「内側から茹でられ、融解していく」という凄惨きわまる超常現象の描写への急転直下は、読者の五感を強烈に刺激し、圧倒的な恐怖と惹きつけを放っています。
冒頭の母の悲鳴と「手を火傷した」という嘘、愛犬リキの不審な死、小村を過剰にマークする教師や都市伝説「黒さん」の噂。
これらすべてのピースが、単なる青春ものではなく「取り返しのつかない何かが既に始まっている」という不穏な緊張感を常に持たせています。
作者様の別作品『陽だまり』の主人公、小村正彦を中心に進行していくこの物語は、冒頭、青春小説のような学校のリアリティーが描写されているんですが、ページを読み進めるに従って、正体不明の怖さが襲いかかってきます。
まず、最初の1話の終わり方に得体の知れない不気味さがあり、次のページで何が起こるかわからない。それがすごく怖いです。
で、この小説の怖さの正体を自分なりに考えてみました。あまりにも文体が淡々としているので、作者様の感情が一切見えてこない。そして休符のない楽譜のように淀みなく物語が流れていることかなと自分は思いました。
面白いなと思うところは、作者様の他の小説ともリンクしながら進行していくところです。
どのお話から読んでも正解です。読む順番によって、印象は変わるかもしれないですね。
暖かな光の方から、それとも闇の底から。
あなたはどの作品から読みますか?