第40話 花嫁修業 *三月*
オレが賛同したことにより、純と宏子さんの結婚は合意された。
「三月!」
仁井家と能己家にわかれての話し合いになると、純がいきなり叫んだ。
「なんだよ? 騒ぐな」
「いいのかよ! オレが結婚しても!」
「別にいいだろう。この時代じゃお見合い結婚なんて珍しくもないんだから」
「オレが結婚するってことはお前が結婚することでもあるんだぞ。戸籍では既婚者になるんだから」
「あ、そうか。宏子さんに代わる人を探さないとダメか」
失念失念。そこまで考えてなかったよ。
「いや、そうじゃなくて! お前は結婚出来なくなるんだぞ!」
「構わんよ。元々この時代で結婚する気ないし」
オレは平成に還るために生きて来たのだ。昭和時代に骨を埋める気などさらさらない。そんな気持ちがあるなら異世界で第二の人生を送ってたわ。
「…………」
平成に還ることは伝えてあるだろうに。なに口をパクパクさせてんだよ。
「先ほどから時代とか言っているが、どういうことなんだ?」
まったく、ここに学さんたちがいるのに叫びやがって。止める暇もなかっただろう。
「まあ、お二人には言っても構わないでしょう。オレは今から約六十年先の未来から昭和時代にやって来た未来人ってところです」
手っ取り早くスマホを出して平成の世を見せた。
「……ご、合成ではないようだな……」
この時代に合成技術とかあんの? まあ、白黒だからカラーにさせり技術はないだろうがな。
「埼玉の風景ですが、あの頃の日本ならそれほど差はないでしょう。よほどの田舎でもなければね」
よほどの田舎がどれほどのものか知らんけどさ。
「未来では魔法が使えるのか?」
「さすがに無理ですよ。この力は異世界、こことは別の世界で得た力です。若く見えますが、これでも四十手前です」
「それで四十手前なの!?」
驚いたのは奥さんのほうだった。
「奥さんもエクサリーを飲んだのなら見た目も若返ってますよ。さすがに寿命は延びませんがね。肉や卵をバランスよく摂れば六十代になっても肌は艶を見せますよ」
異世界の貴族は大金を叩いて手に入れようとしていた。まったく、稼がせてもらったものだ。現代のように物が溢れているわけでないから貯まる一方だったがな。
「オレは十年後、もしくは十五年後にこの世から消えます。結婚などして子を残すなんてことはしません。もしかしらた隠蔽のために女性を用意するかもしれませんがね」
税金や保険とかあるだろうからな。結婚しているのに一人だとか怪しまれたら嫌だし。
「異世界は誘惑が多いからな、宏子さんみたいな人に手綱を握ってもらえ。あの人なら安心して純を任せられる」
「……どんな立場で言ってんだよ……」
「友達として、兄として、お前が存在をもらう立場からだよ。異世界でそう簡単に死なれても目覚めも悪いしな」
ヒキニートのままだったら罪悪感などなかったが、こうして人間らしさが出ると罪悪感も出て来てしまった。友人として、家族としての情が出て来てしまった。
「お前はたぶん、誰かと一緒にいたほうがいいタイプだ。前に出るんじゃなく、一歩下がって周りを俯瞰するほうがいい。宏子さんがどんなタイプかは知らんが、あの感じから協調性はないだろうし、相手を思いやるとかもないだろう。学さん。宏子さんと二人だけで話してもいいですかね?」
「あ、まあ、構わんが、なにをするのだ?」
「世の中にはバケモノがいるってことを教えるだけですよ。なに、殺しはしません。純のお嫁さんになる人なんですからね」
あれは狂犬だ。しっかりと躾して、純を守る護犬にするとしよう。
「……ほ、ほどほどで頼むぞ」
「お任せください。じゃあ、説明をお願いします。花嫁修業してくると」
一般的花嫁修業とは言えないが、あのような特異体に教えるには肉体言語が必要だ。それが一番理解出来るんだからな。フフ。
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