力を失った蛇神と、それに生け贄として捧げられた少女が力を合わせて生きていく話。
冒頭、「芥」つまりゴミと名付けられた少女が縛られ、住んでいる村の住人たちにお前を蛇神の生け贄にすると告げられるシーンから始まる。同時に芥が村人から殴られきつい労働を強いられ、搾取され続けてきた存在だとも描写される。
これ知ってる! 生け贄に出された先で神に溺愛され、その力で自分を虐げてきた連中を見返す女性向け作品でよくある展開だ!と私は思った。だってタイトルもそれっぽいし。
その時点で私は、バーカ! 滅びろ因習村! と、クソ村人どもが無様に泣いて命乞いしながら濁流に呑まれていくザマァ展開を期待すると共に......まあ見所はそのくらいだろうなくらいのテンションで読んでいた。興味のないジャンルなんてそんなもんだ。
ところが、その後のくだりになると印象はまったく違ってくる。虐げられていたはずの芥は強かで、信者を失った蛇神は弱体化しており、早々に格付けは完了する。それ以降は芥が主導権を握り、蛇神をいいように扱いながら信者を集めて成りあがって行く様がコメディタッチで描かれていくことになる。
ここで断言しておくが、芥と蛇神のコンビの魅力......これはほとんど9割方、芥の方で持っている。蛇神は態度は尊大だが、気弱で小市民的な感覚を持った神的存在という、悪くはないがありきたりの味なのに対し、芥は他の作品のこれみたいと簡単にいうことのできない複雑な味がする。言動から妙なエロスを感じる。
理由は言葉では何とも説明しがたい。
確かに縛られてるシーンから始まりはするが、その時は身体ガリガリだし、ほとんどの場面で女としての魅力は描かれていない。常に現実的で冷めてるし、蛇神に対する言動は辛辣だ。優しさや可愛さ、人当たりの良さが強調されることはほぼない。男に媚びるためだけに作られたキャラがラノベにも漫画にも山ほどいるのに、なぜこんな小娘が……?
あえて分析するなら、本編がコメディタッチだから無敵の存在みたいに書かれているが、本編開始前は虐げられ搾取されてきた最弱の存在だったわけで、下手をすれば今の強気な言動全てが虚勢かもしれない……と思わせる境遇が原因かもしれない。
芥は男性全般に対し塩対応なのだが、実はそれも所謂メスガキ状態......薄氷の上に乗っているようなもので、許されるラインを越えてしまえば力の差を思い知らされるという危ういバランスの上に成り立っているのかもしれない。
何か端々に「女」もしくは、今それになろうとしている者の気配が滲み出ている。
まあ、今はあまりにも安易に擦られアク抜きされているが、本来は人外の生贄にされた娘というシチュエーション自体が、相当に嗜虐的で倒錯したものなので、このくらいのエグ味はあってしかるべきものかも知れない。定番になり過ぎてもう飽きたよと思ってしまう設定は、少し目先を変えただけでまた新たな視点が得られる奥深さがあればこそ定番たりえたのだ。
なんか......芥の栄養状態が徐々に良くなって、身体に肉がついていく様子を事細かに描ける作者の手によって漫画化して欲しい一作だ。