本作は作者様が手がけるレトロフューチャーディストピアSFシリーズの最新作です。重工業を中心とした世界観はレトロフューチャーならでは。主人公もバリバリの工場労働者で、熟練工としての技能を密かな誇りとし、毎晩のささやかな晩酌を楽しみに日々過ごしています。彼の交友関係は詳しくは描かれませんが、恐らくは工場で共に働く労働者とのコミュニティがほぼ全て。それでも仲間に兄貴と呼ばれ、会計係の若い女性にも技能精度を賞賛され、こちらもまたささやかな人間関係に喜びを覚えています。
そんな彼がその同僚女性を意識し始めたある日、超重工業地帯を支配する巨大企業群の無機質な指示が届きます。それは彼が働く工場をごっそりと再構築し、労働者たちも建築部品と同様に再配置するもの。翌朝から彼の働く場所はこれまで全く異なる場所になり、彼が親しんだ工場も飲食店も再開発で綺麗さっぱり無くなります。このあたりの権力の暴力描写は、さすがディストピアSF!
それは巨大企業群から見れば合理的再編、労働者から見れば慣れ親しんだ工具ともチームの仲間とも分断される非人間的再配置です。そして当然、彼が想いを抱いた同僚女性とは二度と会えません。さて、主人公はこの理不尽の果てに何を見るのか!
詳しくは本編を見ていただくとして、読んで損のない終わり方とだけ述べておきます。さてよく考えるとこういうことは現代でも普通にありまして、雇用者都合で労働者無視の大規模な配置換えもあれば、明日急に転職していなくなるとか、突然の別れはやってくるもの。仲良くなっときゃよかったと思う時にはもう遅かったりします。一期一会とはよく言ったもんで、もしかすると昔から後悔する人は多かったのかも。てなわけで出会いとは奇跡のようなもの。大事にしないといけないなと噛み締める良作でした。
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