この作品はトランスキャットという人間の身体が猫になる病気に罹った
人の事例を、一人ひとりクローズアップしているお話です。
ある日突然それは起きる。
猫化しても、意識はヒトのまま。
でも、人間の言葉を発することは出来ず、自分だと証明することが出来ない。
しかも、自由に猫になれるわけでも、なる時期が明確に分かるわけでもない。
野良猫として保健所に連れて行かれるかも知れない。
家族においだされるかも知れない。
それだけでも、なんて恐怖でしょう。
裸のまま、普通の猫の様に撫でくりまわされる屈辱。
ヒト化したあとでの気まずさ。
猫の間はスマホも使えず、連絡もおろそかになり社会的な信用も落ちる。
問題は山積み。
ある母親は、そんな息子を恥じた。
ある女は人生に絶望を覚えた。
ある男は受け入れて共に歩む道を整えた。
家族は、知人は、自分は
そんな状況になった時の人間の反応がよく突き詰められていて
色々と考えさせられるお話です。
【レビューコンテスト応募】
猫は世界で一番自由で誇り高き生き物だ。神が創造した最高傑作なのだ。
そんな猫になりたいという願いをもつ人類は数多く存在しているだろう。
ある日、WHOが『極めて稀な変異を伴う症状を確認した』と発表した。TC(トランスキャット)である。
人間が猫になってしまう奇病だ。
本人にはその前兆が何となくわかるらしい。だが、猫化をコントロールはできない。体が溶けてなくなったように服だけ残してその場からいなくなるのだ。
周りは騒然となる。家族から捜索願が出される。WHOも発表を急ぐわけだ。
TC患者は猫なのだ。言葉は「ニャー」だけ。できることも限られる。トイレも食事も1人では、いや、1ニャンではままならない。
人の姿に戻るまで、誰かの世話になり猫として過ごす。何て羨ましい……と言える状態では無い。
猫の立場で、様々な人間模様や社会の歪みと優しさにふれることになる。
ここでは、幾つかの症例が紹介されている。どのケースも考えさせられる事ばかりだ。
お話は、だいたいが人っていいなと思える展開になっている。読めば世界が少し優しく見える日になるだろう。
猫になりたいと思っている人にも読んで欲しい。そして、猫とは何かを考えようじゃないか。
お薦めです。
「人間が突然猫になる奇病」というファンタジックな設定が、現代のリアルな生活感を照らし出す最高のギミックとして機能しています。
最初は「厄介な病気」として描かれながらも、最終的には「立ち位置や視点を変え、大切なものに向き合うための猶予期間」へと意味合いが変わっていく構成が非常に美しく、じんわりとした感動を誘います。
「名もなき家事・雑務」への気づきと内省の深さが見事です。
休日に妻がこなす無数の細かい家事を、猫の姿でじっと見つめるシーンの描写が秀逸です。
普段「自分は手伝っている方だ」と錯覚しがちな男性の心理をリアルに描きつつ、それが職場の「コピー用紙の補充」への感謝にまで繋がっていく精神的成長の流れに、大いに共感と説得力があります。