本作は、チート能力に溺れる世界を、地道な「医療の知見」と「太極拳の理合」でハッキングしていく極限のSF医療サスペンスアクションです。
主人公・神城馨(かみしろかおる)は、一介の作業療法士でありながら、人体の骨格アライメントや動作分析を極限まで突き詰め、数百キロの暴力を最小限のモーメントでいなしていく。
恩師を奪われた怒りを胸に、システムに使い捨てられた元Aランクの青年・蓮を「患者」として抱きとめる馨。
友情を超えた「治療者と患者」としての冷徹な契約と、狂気的なまでの自己調律トレーニングの描写が、読者の脳髄を激しく揺さぶることでしょう。
「これより、環境の治療を開始する──」
理不尽な社会の仕様(ルール)を、泥臭い臨床ロジックで叩き潰す快感。圧倒的熱量の新本格ダークヒーロー戦記がここに開幕!
人間の価値がステータスやランクによって厳格に決められる世界。
作業療法士の神城馨は、ある薬によって、時間が止まったかのように錯覚する「超高速思考能力」を獲得する。
しかし彼は異能の力で戦うのではなく、解剖学・作業療法・太極拳の知識を駆使して立ち向かっていく。
そんな独創的な設定に序盤から強く惹かれました。
特に感銘を受けたのは、「人間を治療する」のではなく「社会という歪んだ環境そのものを治療する」という点で、作者様の想像力の豊かさには驚かされるばかりでした。
「弱い」と切り捨てられる人々を見ても、本人ではなく社会やシステムの側に問題があると考えるところに魅力を感じました。
また、緻密に計算された戦闘シーンはまさに圧巻。
鋭い筆致によって生み出されるスピード感と緊張感の演出は見事で、読みながらゾクゾクするものを感じ、「理詰めでの攻略」には読んでいて心地よさがあります。
単なる異能バトルではなく、「社会を治療する」という読み応えのある作品をぜひお楽しみください。
ステータスとナノマシンによる異能社会という設定自体は既視感がありますが、本作の最大の武器は主人公・神城馨が「作業療法士」であるという一点です。冒頭、敵の巨躯の動きを「大胸筋の収縮」「右大腿四頭筋への荷重」と医療的な視点で冷静に分析していく描写は、いわゆる「異能で殴り合う」バトルとは一線を画す説得力を持っていて、職業設定が単なる肩書きで終わっていない点に好感を持ちました。
天堂創という天才研究者キャラのキャラクター性も強烈です。挑発的でありながらどこか余裕を崩さない言動、そして自らを犠牲にして馨に「治療」の力を託す展開は、テンプレート的ではありますが、テンポの良い文章の中でしっかり機能していました。「症例名にしては遊びがすぎる」という最初のさりげない違和感の提示から、伏線の張り方も丁寧です。
戦闘描写は短いながらも密度が高く、時間が止まったような静止からの一気の加速、「アライメントの崩れ」という独自の決め台詞的表現も印象的でした。概要にある「ナノマシンのバグで壊れた者をFランクとして使い捨てる社会」というテーマと、馨自身の「愛弟子をシステムに潰された」という過去の痛みが、第1話のラストでしっかり結びついており、単発の爽快バトルで終わらない芯の強さを感じます。
レビューでも触れられている「常人の主人公が超人の敵に挑む、柔よく剛を制す」という構図は、この第1話だけでも十分に体感できました。専門知識を土台にした独自の異能バトルとして、続きが気になる導入です。