第38話 ライリーア、ついに醤油を見つける
「ただいま戻りました、兄上」
「無事に戻ったな」
(ルイス君のおかげでまたノーアポ訪問記録が更新されたわ。毎回これで通れるのどっかおかしい気がするのだけど)
「まずは急ぎ報告です。神獣の住まう洞窟が、魔晶石の採掘場だったのですが、神獣の力の影響で、見渡す限り高品質な鉱脈に変化していたようです」
「契約はできたのか?」
「最奥の……この地図に印をつけた部分に干渉しなければ、採掘はしてもよいとのことでした」
「これはなかなかよいカードを見つけたな。国家の均衡を揺るがしかねんぞ。……こちらで調査隊を派遣させる。隊は機密を守れる者のみで編成する。お前はまずは休め。少し顔色が悪い……」
「はい、ありがとうございます……」
◇◇◇
「ルイス君、研究は順調に進んでる?」
「お帰りなさい。今回はきちんとテオドール殿下の執務室に直行してくれましたね?」
「ええ、…ただ、そろそろきちんとアポをとれって怒られる気がするわ…」
「ラルド、すまん寝室まで付き添ってくれないか?」
「いいですけど、まだ昼間ですが?」
「兄上に顔色が悪いと言われた。最悪途中で倒れるかもしれん」
「最悪ではなく普通にあり得そうですよ、……ならば、急ぎましょう」
(殿下ってば前は倒れるまで我慢してたのに、今は自分で倒れる準備をしている!成長してるわ)
「ライリーア殿、エーメル、君たちも少し休んでおいてくれ」
「はい、また明日からがんばりますね!」
すっかり慣れた客室住まいも、もう3か月だ。
(ハードル競争みたいな毎日だけど、結構楽しい、な……)
(神獣も残り3体、か……。あと3か月で目標を達成できるのかしら)
◇◇◇
「ラルドさん、今度はお醤油を探しにいきましょう」
「断る。俺は今仕事中だ…」
「そんなラルドさんに、殿下からお休みの指示をいただいてきています」
「だーかーら、なんでお前は俺を飛ばして許可をとるんだ?」
「面白いからです」
「おま、言ったな…!」
「市場のお店でお味噌を売っているところ中心で探したいのですが……」
「……どうせ断っても連れていかれるんだろ?」
「もちろんです!」
「財布は寄越せ」
「はい」
魔晶石の鉱脈は王国の財源になるそうだが、口止め料がわりに研究室メンバーには、破格のボーナスが支給されたのだった。
(これで今日こそ醤油をゲットするわよ……!)
市場の奥の交易品を多数取り扱う店を回るも、なかなか目当てのものは見つからない。
「味噌は自作もできるけど、醤油って自作ってあんまり聞かな……あ、」
「どうした?」
「いや、あれ探してたやつかも」
「ラルドさん、交渉、交渉をお願いします。殿下の和食に関わる重大なミッションです!」
「お、おう……」
「お客さん、変わったものが好きなんだね。これはたまたま仕入れたけど、色がこれだろ?売れなくて困ってるんだよ」
「王宮でいくつか買い付けますので、今ある在庫すべて出してもらえるか?」
「王宮で?そりゃ本当ならすごいけど、いや、あんた見た目騎士様っぽいし、東洋の珍しい交易品を買い集めてるって噂もあった。嘘じゃなさそうだな」
「手付はこれ。定期的に仕入れ可能であれば、同量をこの条件で……」
「これは、ただ……定期的な仕入れに関しては、こっちも確認しないと難しいな」
「では、確認をお願いします。……簡易的にですが、こちらが契約書になります」
「本格的だな……。こちらも確認ができたら連絡する」
(…ラルドさん、やっぱり事務仕事も早い…殿下の仕事も手伝ってるからかしら…)
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