見え透いた罠だと分かっているのに、それでも進んでしまう。
この作品は、そんな少し無謀で、少しおかしくて、けれどどこか眩しい「チャレンジ」の物語でした。
ダンジョン、バナナ、ピアノ線、断崖絶壁。出てくる状況はかなりコミカルなのに、主人公が何度も挑み続ける姿には、不思議と胸を打たれるものがあります。失敗しないから強いのではなく、失敗しても、それでも次へ進もうとするところに、この作品の温かさがあると感じました。
深月真様の魅力は、短い物語の中に、笑いと前向きな余韻を自然に込められるところだと思います。掌編ならではの軽やかさがありながら、読み終えたあとには「明日も少し頑張ってみようかな」と思わせてくれる力がありました。
それを勇気とは、きっと誰も呼ばない。
けれど私は、この主人公の姿に、勇気にとても近いものを感じました。
短い時間で読めるのに、心にはしっかり残る掌編です。
挑戦することに少し疲れた人にも、ぜひ読んでほしい一作でした。