史実に名を刻む英雄ハンニバルを、最初から完成された将軍ではなく、恋心と宿命の間で揺れる十五歳の少年として描いているところに惹かれました。
父と交わした血の誓い、初陣で早くも開花する圧倒的な指揮能力。そして、勝利に酔うことなく奇襲を許した原因まで見抜く冷静な“目”。後にローマを震え上がらせる名将の片鱗が、ひとつずつ鮮やかに浮かび上がってきます。
一方で、ハンニバルへの想いを抱くアリサの存在が、戦いへ向かう物語に温かな切なさを添えています。彼が自ら恋心を封じる裏で、アリサは彼の「帰る場所」になると決意する――互いを想いながらも、まだその気持ちが届いていない二人の対比が胸に残りました。
若き英雄が背負う苛烈な宿命と、それでも失われない純粋な恋。二人の未来を見届けたくなる歴史ロマンです。