「貞操観念逆転」というジャンルではよくある設定ですが、本作の面白さはそこではなく、「1995年」という具体的な時代設定にあります。冒頭、酔った先輩から不意打ちのキスをされる場面から始まり、約2週間前の若返りの瞬間まで時間を遡る構成は、いきなり読者を「?」状態にしてから一気に引き込む、テンポの良い導入でした。
特に光っているのは、異世界転生ではなく「自分が知っている過去(1995年)への巻き戻り」という設定を活かしたディテールの数々です。ブラウン管テレビ、ビデオデッキ、サンクスというコンビニ、ピルクルが100円、東スポ、松本人志がまだ黒髪で坊主じゃない、「ガキの使い」のビデオ……。アラフィフ主人公ならではの「懐かしさ」とツッコミが絶妙に絡み合い、単なる異能力モノにはない実在感があります。さらに、競馬の結果を覚えているからお金には困らないという、王道ながら手堅い「やり直しチート」の仕込みも好印象でした。
クローゼットの中にスポーツブラしかない、ふんどしのほうがまだ理解できるのに……といった、貞操観念逆転世界への違和感を“筋トレ好きマッチョオヤジ”特有のズレた視点でボヤく語り口がクセになります。シリアスになりすぎず、終始ライトな自虐とギャグで進むテンポの良さは、通勤・通学中にサクサク読みたい層にはぴったりだと思います。
各話タイトルを見る限り、サークル活動を軸に個性豊かな女性キャラクター(クールな先輩、ゆるふわ系、ギャル、母娘ネタなど)が次々登場し、王道のドタバタ系ハーレムとして展開していく構成のようで、性描写有りのタグ通り、しっかり大人向けの要素も含む作品です。
1995年という時代を知る世代には強烈にノスタルジックに、知らない世代には「ヘンテコな異世界トリビア」として楽しめる、二重に魅力のある設定だと感じました。