継母に虐げられ続けた姫アネットが、生贄妃として魔界に差し出される――
この時点で重い物語を想像するのに、魔族の主食が 「人間の絶望のぬか漬け」 という衝撃の設定が一気にトーンをひっくり返す。
しかも現れた魔王は、魔法アカデミー時代の友人バアル。
“生贄妃”という絶望的な状況が、まさかの 魔界グルメ改善プロジェクト に変貌する瞬間が最高に楽しい。
バアルの依頼はただひとつ。
「人間の絶望をもっと美味しくしてほしい」
この言葉を“猶予期間をもらった”と勘違いしたアネットが、魔族のために絶望をおいしくするべく奔走する展開は、
ダークなのに明るく、残酷なのに優しい、絶妙なコメディラインを走っている。
魔界名物の“絶望のぬか漬け”というワードセンスが抜群で、
街おこし×魔界×グルメという異色の組み合わせが見事に噛み合い、
アネットの健気さとバアルの不器用な優しさが、物語に温度差のある甘さを添えている。
人間の絶望をどう“美味しく”するのか。
魔界の食文化はどう発展するのか。
そしてアネットは本当に生贄妃になるのか――
笑いと不穏が同居する、魔界版ほのぼの街おこしファンタジー。
故郷や住んでいる場所に愛着を覚える理由はなんだろう? 私が思うに、それは『グルメ』だと思う。いくら住心地がよくても、ご飯がマズイとまるでやる気が起きてこない。想像してみてほしい、朝一番に口に入れたものがゲロマズだとその日は台無しになってしまうだろう。そして、逆もまた然り。美味いもので朝を始められると何かといい気分で頑張ろうと思えてくるものだ。
人の絶望を喰らう魔族の長、魔王。その生贄、そして厄介払いとして魔界へ追いやられた理系の不遇王女様、アネット。そんな彼女の相手……つまり魔王はなんと学生時代に苦楽を共にした同級生だった。そして、彼女はとんでもない事を頼まれる事になる。
『絶望を、美味しく調理してくれ!!』
魔王と生贄、そして家族。一家総出のグルメな街興しが始まる。全ては、絶望を美味しくいただくための……