第6話 風を操る者「十一」

 薄暗い倉庫。

 十三と十四の前に、一人の男が現れた。

 痩せた長身。

 黒いコートが風もない室内で揺れている。

 年齢は三十代後半ほど。

 鋭い目つきと無精ひげ。

 そして、その胸元には銀色のプレート。

 そこには数字が刻まれていた。

「11」

「まさか……」

 十四が顔を上げる。

「十一か」

 十三が呟いた。

 組織の上位能力者。

 コードネーム――十一。

 彼の異能は単純にして凶悪だった。

風魔法。

 空気を自在に操る。

 風を刃に変え、

 風を盾に変え、

 風を弾丸に変え、

 時には嵐そのものを呼び起こす。

 十一は煙草に火をつけると、静かに言った。

「能力者狩りの件だな」

「知っているのか」

 十三が尋ねる。

「ああ」

 十一は倉庫の窓へ歩く。

 その瞬間。

 ヒュオッ!

 突風が吹いた。

 閉まっていた窓が独りでに開く。

 紙くずが舞い上がる。

 十四は思わず身構えた。

 十一は外を見ながら続ける。

「昨夜、八番が殺された」

「何だと」

 十三の表情が変わる。

 組織の能力者は数字で管理されている。

 その八番が死亡したという。

「死因は不明」

「能力は?」

「雷撃」

 十一は答えた。

「だが相手は傷一つ負っていなかった」

 沈黙。

 不気味な静寂。

 その時だった。

 突然、倉庫の鉄扉が吹き飛んだ。

 轟音。

 金属片が四散する。

 十三が反射的に炎を放とうとした。

 だが――

「動くな」

 十一が右手を上げた。

 次の瞬間。

 ゴォォォォォッ!!

 巨大な風の壁が発生。

 飛散した鉄片をすべて弾き返した。

 嵐の盾。

 空気の要塞。

 それが十一の力だった。

 煙の向こうから人影が現れる。

 黒いフード。

 顔は見えない。

「見つけたぞ」

 低い声。

「十三、十四、そして十一」

 男は笑った。

「能力者狩り……!」

 十四が息を呑む。

 背中の痛みなど忘れるほどの殺気。

 だが十一は冷静だった。

 コートを翻し、一歩前へ出る。

「下がっていろ」

「一人でやる気か」

 十三が問う。

 十一は小さく笑った。

「風はな」

 その瞬間。

 倉庫全体が激しく揺れた。

 竜巻のような暴風が発生する。

 床が砕ける。

 窓ガラスが粉々に吹き飛ぶ。

「目に見えないから恐ろしいんだ」

 十一の瞳が鋭く光った。

 能力者狩りの男と、風を支配する十一。

 激突は避けられない。

 そして十四は知らなかった。

 この戦いの先に、組織の創設者である「零(ゼロ)」にまつわる恐るべき秘密が待っていることを。

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