第9話 進む片付け

 それから何日かが経ち、同じことをやっていると廊下にあるゴミが次第になくなっていった。


 細かなゴミや砂やほこり、何かをこぼしたであろうものがこびり付いていたりする。そんな床を踏むと黒い靴下が白くなってしまうほどだ。


 次は風呂場を片付ける。

 風呂場はシャワーだけをするためそこまでゴミは落ちていない、だからと言ってないとは言えない。


 ペットボトルが散乱している。辺りはカビだらけ、鏡も水垢が付いている状態だ。


 面倒くさがりなぼくは石鹸だけで全身を洗う。そのため、それ以外余計なものはない。


 ぼくはさっそく風呂場の片付けを始めた。


 浴槽の中にまでペットボトルがあふれそうなほどに積み上げらえている。ペットボトルの捨て場所がなくなり使っていない浴槽の中がちょうどいいと考えた結果がこれだ。


 いったい何本のペットボトルをゴミ袋に入れたことか。ゴミ袋が二桁超えなかったのはよかったほうだと思う。


 白かったであろうバス周りは黄色く水垢がこびり付いている。やはり浴槽の中も小さなゴミや黒い汚れがある。


 排水口は髪の毛がひどく絡み合い、そこから湿った生臭いにおいがしてくる。普段は石鹸のにおいがシャワーを浴びるごとに流れていくから気にもしなかったが、こうして何もしないでいると普通ににおってくる。


 そうしてようやく片付けが終わった。ゴミがなくなった分、シャワーを浴びるときにいちいちゴミを足でどかさなくて済むようになった。


 ひと段落付き、ぼくはシャワーを浴びてくつろいでいると招き猫が目についた。あの招き猫を置いてからしばらく経っているが、福を招く気配はない。


 小明さんが置いて行ったものだ。部屋をきれいにしていけば福を招くと言っていたが、いったいどういうことだろうか。


 ぼくは棚の上に置いてある招き猫に近づき、何か仕掛けでもあるのかと触ってみた。よく見ると液晶画面が付いており、そこに『八六』と表示されているのがわかった。


 何の数字だかわからないが胸のところにその数字が付いていた。

 この数字が百になったら何かが起こるのだろうか。

 そんなことを頭の隅に置いて次に片付ける場所はトイレにすることにした。


 トイレのドアを開ける。トイレは比較的にきれいだった。トイレットペーパーの芯が風呂場同様たくさん散らばっている。もちろん足の踏み場はない。


 ぼくは芯を拾いゴミ袋に入れていった。いったい何本あるのだろうか。10年間でこんなにたまるものなのだろうか。


 自分がいったいどれだけ尻を拭いたのか。


 便器の中はさすがに流している分、それほど汚くはなかった。が、水垢なのかカビなのかわからないが、水が溜まっている場所には黒い汚れが付いている。


 ぼくはそれを見なかったことにしてそっと蓋を閉じた。


 トイレの片付けは簡単だった。トイレットペーパーの芯をすべて捨てて終わりとなった。


 この勢いで次はキッチンの片付けをすることにした。


 キッチン周りの片付けをしようとしたところで玄関のチャイムが鳴った。時計を確認すると午前三時を回ったところだ。こんな夜中に来る人物と言えば。


「夜分に申し訳ありません。部屋を拝見してもよろしいでしょうか?」


 小明さんだ。不思議なことにすこしはきれいになった部屋を彼女に見せたくなっていた。


「どうぞ」


 ぼくは彼女を部屋に通した。


 彼女は一通り見て回ると、一瞬だが笑みをこぼしてぼくに言った。


「玄関、廊下、お風呂場、おトイレは片付けられていますね。その調子で頑張ってください」

「あ、はい」

「では、わたくしはこれで」

「あっ、あの、小明さんが置いて行った招き猫なんだけど」

「はい」

「それに数字が付いているんだけど、あれはいったい……」

「お気づきになりましたか。あれはこの部屋のゴミがなくなっていけばいくほど減っていきます。零を目指してくださいね」

「ぜろを目指す? じゃあ零にすれば福を置くことができるってことですか?」


 彼女はこくりとうなずいた。それから薄っすらと笑みを浮かべ彼女は帰って行った。


 ぼくは福とは何かということ胸にしまい片付けの続きをした。


 キッチンを見ると、いままではそんなに広い範囲の場所ではなかったためか、異様に広く感じる。冷蔵庫、その上にある電子レンジ、隣には洗濯機。そして、その向かい側にガス台や流し台が置いてある。


 その下には引き出しやら開閉するドアのある収納ボックス。


 相変わらずゴミが散らかり放題。足の踏み場も当然ない。ほとんどキッチンには立ったことがない。いわゆるゴミ捨て場として使っている。


 冷蔵庫、電子レンジ、洗濯機は引っ越し初日に買って持ってきたものだが、洗濯機だけはほとんど使っていない。


 洗濯はコインランドリーを使っている。金さえ出せば勝手にやってくれるからそれに甘えさせてもらっているのだ。


 本当にぼくは面倒くさがり屋だ。


 休日は友人とどこか遊びに行くため片付けはやらない。休日になるとどうもやる気がわかなくなる。


 仕事が終わり帰ってきてその勢いで片付けをやっている。休む前のちょっとした時間にやる。そうしないと面倒くさいという魔物がぼくの中で暴れて、体の言うことを聞かなくさせてくるのだ。

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