作者さまの前作が大好きだったこともあり、今作は毎日、更新の時間を心待ちにしていました。
タイトルのとおり、本作は認知症を描いた物語。
それは決して他人事ではなく、自分自身も、あるいは大切な誰かも、いつか向き合うかもしれない。
だからこそ、読みながら何度も息を詰めました。
景色の色彩描写は鮮やかなのに、物語はどこか薄曇りの気配がある。
美しいはずの世界が、記憶の揺らぎや不安をまとっているよう。
認知症によって、その人が積み重ねてきた記憶は失われていってしまう。
では、何をもって、「その人である」と言えるのか?
身体なのか、心の在り方なのか、あるいは、忘れてしまってもなお残る関係そのものなのか。
寄り添い続けたいと思っても、自分や家族に皺寄せがきてしまう。
いつかは、何を守り、何を手放すのかを選ばなければならない。
選んだものも、選べなかったものも、抱えながら生きていくしかない。
そんな切なさに締め付けられながらも、読み終えたあとに残るのは、胸の奥に灯る温かさでした。
育ててきた思い出を、今ある時間を、大切にしたい。
家族をより愛しく思える一編です。
認知症は本当に悲しい病気の一つだと思います。
少しずつ、少しずつ零れ落ちていく記憶の欠片と、「あと一日」、「あと一日だけ」と頑張り続けるご家族と……その描写がすごくリアルで胸が締め付けられました。
大事な人との別れは、何も死別だけではないんですよね。
目の前にいるのに会えない悲しみは、きっと死別とはまた違う辛さがあることと思います。
すごく考えさせられる物語で、私も今いる家族を大事にしたいと改めて強く思いました。
また、他作とのクロスオーバーも随所にちりばめられており、こちらも一緒に楽しませていただきました。素敵な作品を、ありがとうございました。おすすめです!
認知症の義父と、その家族を描いた物語です。
その人がその人でなくなっていく。
記憶を失い、思い出を取りこぼしていく。目の前にいるのに、少しずつ手の届かない場所へ行ってしまうような感覚がとても切なく、胸に残りました。
また、家族が向き合わなければならない決断や、その中で揺れる夏実の気持ちも丁寧に描かれています。
情景描写と心理描写の結びつきが自然で、何気ない会話や日常のひとコマから、登場人物たちの人柄や関係性がとてもリアルに浮かび上がります。
苦しさや悲しさだけではなく、温かな時間や思い出も描かれていて、明るさも暗さも含めて、その人らしさなのだと感じさせてくれます。
読後は切なさが残るのに、不思議と温かく、浄化されたような気持ちになりました。
大切な人と過ごした時間を、そっと胸に抱きしめたくなるような物語でした。
認知症の義父をめぐる家族の物語です。
介護を題材にした作品ですが、読後に強く残ったのは、介護の大変さそのものよりも「死ではない別れを受け入れる苦しさ」でした。
本人はそこにいる。会えるし、声も聞ける。けれど、こぼれるように失われていくものがあり、かつてのその人にはもう会えない。
嫁という少し距離のある視点から描かれることで、愛情や罪悪感に寄りきらない現実味がありました。
育児や、夫婦の馴れ初めといった日常も丁寧に描かれており、暮らしの中へ介護が入り込んでいる感じがするのも印象的でした。
長女の陽葵ちゃんが、とてもとても可愛いです!
苦くて、静かで、読み終えたあとにも長く心に残る作品だと思います。
重い話題ですが、読んでよかった、今ある家族を大切にしようと思えました。
幸せな家族の時間は限りあるもの。読後は喪失感と、思い出が照らすこれからの人生の温かさが心に残ります。
本作にはあらすじにも述べられているように、介護の苦労や嫁姑を描いたものではありません。有吉佐和子『恍惚の人』のような陰惨さはありません。
登場する家族の生活が丁寧に描かれます。明示されなくても登場人物のこれまでの人生や、性格をうかがわせる筆力はさすがです。
お互いに思いやりあう家族だからこそ、主人公である主婦・夏実が終盤にする決断が切なくも温かいです。
題材上、ハッピーエンドとはいきませんが、この家族の関係は形を変えて続いていくのだと思えました。
ちなみに作者様の前作『弟と、星を見る約束をした』のファンの方には嬉しい登場もあります。
追記!
カクヨムレビューコンテストっていうのやってるみたいですよ。【レビューコンテスト応募】ってレビューの中にいれるのちょっと気が引けますよね。もし図書カードもらえたら地元の本屋で本を買おう…でないと潰れちゃう。