タイトルを見た時点では「原稿犯」と「現行犯」を掛けた言葉遊びなのかな、と単純に思っていました。
ですが、読み進めるほどに、このタイトルが作品そのものの構造にまでつながっていて驚かされ面白かったです。
著者さんの作品でいつも印象的なのは、言葉に対する独特の感覚です。
人名や固有名詞、漢字の読み替え、英語との掛け合わせなど、「次はどんな言葉が出てくるんだろう」と思わせる仕掛けが次々に登場します。
ダジャレやパロディで終わらず、それが人物設定や世界観、物語の鍵にまでなっているところに、この作品ならではの個性を感じました。
記憶の隙間を抱えた流斗が、ミキオや周囲の人々、残された映像、そしてVISIONを通して少しずつ自分と世亜の過去に触れていく展開も面白かったです。
にぎやかな言葉遊びの奥に、「記憶が欠けても、その人を大切に思った事実まで消えるわけではない」という切なさや優しさが流れているように感じます。
発想が次から次へと飛び出してくるので、作者さんの頭の中にある巨大な箱庭を覗かせてもらっているような読書体験でした。
普通の物語の型には収まりきらない、かなり独創的な一作だと思います。
「原稿犯と現行犯、なるほどそういうことか」とタイトルに戻ってこられるのが気持ちいい。
作者さんにしか書けない世界だと思いました。