喫茶店の片隅で続くのは、報われるか分からないのにやめられない片想い。
困ったように笑う彼は「応えられない」と言いながら、彼女の好みをすべて覚えていて、頼んでいないケーキまでそっと差し出してくる。
その優しさが嬉しくて、苦しくて、ずるい──
雨上がりの空気のように澄んだ時間の中で、彼女の想いは静かに積もっていく。
言葉にできない距離感、ふとした仕草、紅茶の香り。
どれもが恋の証拠のようで、読者の胸にも淡い痛みと温かさが残る。
実らないかもしれないのに、世界でいちばん愛おしい片想い。
その繊細さが丁寧に描かれた、優しい恋の短編です。