Xのタイムラインでお見かけして、ずっと気になっており、やっと読むことができました。
タイトルの通り、ものすごくフェチを感じたのが、唇の描写の繊細さです。
お話を書くにあたって何かを描写する時って、書き手がどのくらいの目の細かさ/粗さで何をどんなふうに描き出すかを自由に決められるわけですが。
このお話でめちゃくちゃ繊細に描き出されるのは、なんと、唇!!
そこの網の目を細かくするのかぁ、というのがまず「やられたぁ〜!」って感じでした。
これほど唇が魅力的に見えるお話はないと思います。
(唇、というのが絶妙ですよね、性的ですが性的すぎない。それがまた大変よかった…)
しかも、唇だけじゃないんです。
そのほかを描写するときも、表現がシンプルに上手い。
絶妙に届く、でもありきたりでない語り方が随所に使われてて、引き込まれました。
楽しみなお菓子を少しずつ食べるみたいに味わって、最終話、番外編までいただきました。
読み始めると、切なさが胸に染みて、2人の幸せが見たくて、ついつい続きを読みたいと、気が急くかと思います。
でも、個人的にはこのお話、じっくり、ゆっくり、ひとつひとつの表現を味わいながら読み進めるのもおすすめです!
唇にしか興味がない女の子が、たった一人の唇だけに、「触れたい」を超えた感情を抱いてしまう物語。
設定だけ見ると、少し変わったフェチ作品なのかな……と思っていました。でも、読んでみると印象はまったく変わりました。
まず、唇の描写が本当にすごい。読んでいるうちに、気づけば自分の唇に触れてしまっている。そんな体験は初めてでした。
でも、この作品の本当の魅力はそこから先です。フェチを入り口にしながら、「好き」という感情が分からなかった女の子が、たった一人を特別な存在として好きになっていく。その過程を、これ以上ないほど丁寧に描いた恋愛作品でした。(もちろん、思わずドキドキしてしまうシーンもあります。)
主人公の昊は、人の唇を見ずにはいられず、無意識に品評してしまう子。そんな彼女が後輩の白瀬奏多と出会い、「触れたい」という今までにない衝動を抱きます。その気持ちから始まった放課後は、「練習」という名目のキスへ、そして誰にも言えない独占欲へと少しずつ変わっていきます。
そして、何より印象的だったのが、プロローグで九年後の二人が描かれていること。「あのとき、あと一歩踏み出せていたら」という後悔が、大人になった二人へと繋がっていく構成は本当に見事でした。
もう一度、最初から読み返したくなる。そんな作品です。