盗んだ卵

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「じゃあ、はじめますか」

 退勤後、冷房がガンガンに効いた、サーバ室に横澤と嵯峨がいた。

 黒いビル群のようなサーバーが音を立てている横で、スツールの机と椅子に腰掛けている。

「改めて言うけど、それ盗んだことがバレたら、俺は即刻『盗んだものとは知りませんでした』っていうからな」

と横澤が嵯峨に釘を刺した。黙って嵯峨が頷く。

 おずおずと嵯峨が机の上に置く。それはセイレのハードディスクだった。

「なんでそんなもん盗むかねえ…」

 横澤が横目で見てた。

「いつの間にそんなにセイレと仲良くなったよ?」

「別にあの時以来、あのセイレには会ってません」

「入れ込んだ以外なんか理由あるの?」

「別に。皮膚病の件の調査終了後にハードディスクを返却しに行ったら、そこにあったんですよ、このハードディスクが」


 カウンターの片隅に置かれていた優愛のハードディスク。あのセイレは解体されていた。

 スーツを着たサラリーマン風のオーナーは言った。別に優愛にあざが出た訳じゃないと。


 ならなんで解体したのか?と嵯峨は聞いた。

 

 いつ出てもおかしくないし、全部入れ替えることが決まったんだよ、1体だけ古い型があってもな。


「こういうのはね、全部一緒がいいのさ。いらなくなったらとっとと処分する」

と淡々と話した。


「その言葉を聞いたら、じゃあ僕がもらうって」


 一瞬で優愛のハードディスクだけつかむと、他のセイレたちのハードディスクをカウンターにぶちまけた。卵形のハードディスクが滑ってこぼれ落ちていく。


 そうやって、優愛の“たまご”を手に入れて、今嵯峨の手のひらにある。


「機械なんだから、別に買い替えなんてあるだろ?」

 横澤が聞く。

「たぶん、このセイレがどうとかじゃなくて、その、違う原因で…」

というと、嵯峨は黙ったままうつむいた。横澤がその様子を見てこう言った。

「ま、そういう人間ぽい意味わからんところがあるのは悪いことじゃないと思うけど。さて、やりますか、“解析”」

「お願いします」

「まず聞くけど、これこのままでも使えるけど? 体だけ用意すればいいじゃん?」

「いや、もうセイレロイドにはしたくなくて。ハウスキーパーとかの普通のアンドロイドにします。だから、特殊なプログラミング部分の削除や、記憶の消去など、これからの設定でどうするか考えるために、まずはこのセイレの設定を確認したいです」

「本来解析なら立山の方が得意だけどね」

 嵯峨は頭をかぶり振る。

「だめです、立山さんには盗んだなんて言えないし。それに女性にセイレロイドの解析は…」

「まあ頼みにくいわな。頼んだとして、立山はやらない気がする」

「そうなんです」

「あと計良は知識的に論外だし」

「…計良さんには言ってはないですが、たぶん…バレてます」

「は、なんで?」

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