最終話 猫の名は

「たけくん。どこに行くんですかー!」


「だから、バイトの面接に――」


「行かなくていいと言ってるでしょー!」


「いや、流石にそろそろ働かないと――」


「ダメですー!」


 玄関で押し問答になっていた。片平は俺を必死に引き留めている。


「なんでダメなんだ?」


「……だって」


「今の状況が少し歪だということは分かるよな?」


「これは私の愛で……」


 彼女はしょんぼりと肩を落とす。


「七歳下の女子高生に貢いで貰っている。この状況はやっぱりおかしい」


「私だって……、私だって。もう、たけくんが傷ついてる姿は見たくありません!」


「……」


「嫌なんです。私の好きな人が悲しんでいるのは」


「(……何をやってるんだ俺は)」


 片平は膝から崩れ落ち、尻餅をつく。瞳には涙がにじんでいた。


「にゃ~」


「? どうしたんだ?」


「にゃ~」


 飼っている白猫がこちらに近づく。何かを伝えたいようだ。


「にゃ~」


「……『仲直りして』、か?」


「にゃー!」


「たけくん。私の愛は独りよがりでしょうか?」


「そんなことない」


「でも、私。たけくんに迷惑かけてばっかりで……」


「俺の方が迷惑かけてると思うが」


 俺は床に座り、彼女と視線を合わせる。


「こっちを見て欲しい」


「……」


「ごめん。泣かせるつもりはなかった」


「……たけくん」


 片平をそっと抱き締めた。その華奢な身体からだを壊さないように。


「俺も片平が好きだ」


「――!?」


「だからこそ、対等な関係でありたい。一方通行の愛ではダメなんだ」


「……私を彼女にしてくれるんですか?」


「ここまで養われているんだ。男として責任は必ず取る」


「もう一回」


「ん?」


「もう一回、好きって言って」


「……」


「にゃ~」


 白猫は呼応こおうするように鳴いた。


「片平のことが好きだ。俺と付き合って欲しい」


「……喜んで」


「にゃ~」


「たけくん。この猫の名前、今決まりました」


「あんなに悩んでたのに?」


「――『ラッキー』です。今日からそう呼ぶことにします」


「ラッキーか。少し安直な気もするが……、悪くないな」


「ラッキー。私たちに幸運をもたらしてくれてありがとう」


「にゃ~」


 白猫の返事は相変わらず、いつもと同じだった。


 


 

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銀髪美少女の恩返し。鶴ではない。 うむぞう @namamugi333

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