rebellion the law〜神の行使者たちが抗う世界の史実〜

星乃夜流(ほしのよる)

第1話 幻想

「どちらにしようかな 天の神様の言う通り みみみかんの皮捧げ 私はあなたを慕いました」


「は? お前、何やってるんだ?」


初夏の日差しを自販機が反射して、ベンチに座る俺を照らす中、同級生の美夜(みよ)が指でジュースを指していた。


「みかんジュースだ! やっぱり私とみかんは相性が良いんだね!」


(いや……『どちらにしようかな』は最初から決まってるだろ……)


美夜はみかんジュースをゴクゴクと一口で飲み干すと、空になったペットボトルをゴミ箱の中に放り投げた。


「お前、一口で全部飲んで大丈夫か?」


「喉が渇いてたし、美味しかったから飲んじゃったんだよ。え? それとも何? 或真は、私に太るって言いたいの?」


「全然大丈夫そうだな」


「そこは否定しろよ〜」


美夜は、俺が所属しているUMA捜索同好会で一緒に活動している。UMA捜索同好会の会員は俺と美夜を合わせても4人しか居ない。

高校で活動できる同好会の最低人数4人にギリギリ達している小さな会だ。


「そういえばさ、もう6月なのに先週雪降ったよね! ニュースでは異常気象って言ってたけど、これってもしかして、宇宙人の仕業じゃないかな? なんか、こう……雪雲を生み出したとか、天候の操作したとか」


「そこは、宇宙人じゃなくて雪女じゃない?」


「確かに〜」


UMA捜索同好会は、活動成果を全くと言っていいほど挙げてない。まぁ、4人でUMAの捜索も無理な話だけどな。


「あっ……言い忘れてた! さっき優里先輩が、放課後に大事な話があるって言ってたよ」


「優里が?」


「そうだよ。なんか、同好会の今後の話がしたいって」


「身構えてしまうな。活動成果を一切挙げてないから」


「だよね〜」


それから俺は、少し不安になりながらも5.6時間目を過ごした。





UMA捜索同好会室


部屋の中に入ると、お通夜状態のような優里が顔を下に向けながら一枚の紙を出した。


「今日の朝、2年の高岸が同好会を辞めた。だから、会員数が足りなくなった。生徒会からは、猶予は与えられないらしい」


俺はその紙を見た後、優里聞いた。

「高岸……退会したのか。でもなんで同好会の解散猶予が与えられないんだよ……てことは、今すぐに解散なのか?」


「嘘でしょ? もしかして、天の神様が私たちに災いを起こしたの? みかんの皮を捧げたから? あぁ……神よ、どうか私達を見捨てないで……」


俺と美夜があまりに唐突な事に混乱していると、ドアが『バンッ』と音を立てて生徒会の人たちが入ってきた。


「優里さん、時間になりました。立ち退きをお願いします。この部屋は、明日からサッカー部の副部屋として扱うので、今から室内の整理を行わないといけません。立ち退きをお願いします」


入ってきた生徒会メンバーの後ろには、ユニフォームを着たサッカー部の部員が重そうな荷物を持っていた。


「分かりました。今すぐ、この部屋をサッカー部に明け渡します。美夜、或真、今までありがとうな。楽しかったよ」


そうして、UMA同好会は解散した。

バタバタとサッカー部の部員が荷物を運んでいる中で、夕日が俺の背中を刺していた。





家の鍵を開けようとすると、心無しか鍵穴が水で濡れていた。


『ガチャッ(鍵が開く音)』

「ただいま〜……って、この家は俺一人だから誰もいな……っえ?」


玄関には何故か知らない靴があった。


「これ誰の靴だ? 不審者か?」


俺は恐る恐る、ほんのりと明かりが付いているリビングに向かった。


『バシュッ(水の音)』


「は? なん……だこれ。水が……動けねぇ」

リビングに入った途端、水の輪が俺を動けないようにした。


「夜凪或真(やなぎあるま)、お前を世界法師協会の規定により、零級危険人物として拘束する」


俺は、目の前の水髪の青年から溢れ出る殺気のような気配に気圧されながらも抵抗した。


「は? お前は誰だ! なんで俺の家に……それよりも、危険人物ってどういう事だよ。なんで俺を拘束するんだよ。この水はなんだよ!」


俺が叫ぶと、水の輪の拘束は更に強固になった。


「俺にお前の問いに答える義務はない。行くぞ」


水髪が拘束した俺の腕を掴んで、外に連れ出した。


だが、外では雪は降っていた。


「雪……このタイミングか」


『プルルル……プルルル(電話の音)』


『はい、こちら紫苑。はい……はい……。えっ?今、零級危険人物を拘束してるんだけど、お前本気で言ってるのか? あっ……おい!(ツーツー)』


「マジかよ……ほんっとあの人は……」


水髪はしばらくの間、眉間を手で摘むと俺の拘束を少し緩くした。


「それで少しは動き安くなったろ。今から、お前が通ってる学校に行くけど、良いか?」


「は? 急にどういう事だよ。さっきから」


「先ほど、お前の学校にイエティと雪女の夫婦が現れた。それによって、この町全体に雪が降り出した。だから、この2体を討伐しに行く。早く行くぞ。被害が大きくなる前にな」


そうして俺は、何も分からないまま水髪に拘束されて学校へ行く事になった。




        (第1話:了)






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