病院の中庭で交わされる会話から始まる、静かで不思議な余韻のある作品です。
最初は、療養中の語り手と、恋人の回復を待つ女性の穏やかな時間に見えます。
けれど、会話の端々や視線の動き、病室にいる「恋人」とのやりとりから、少しずつ噛み合わなさが浮かび上がってきます。
その違和感が大きな音を立てるのではなく、日常の中にそっと混ざっているところが印象的でした。
春の章に入ってからは、年下なのに「ねーさん」を名乗る美咲の存在感が一気に物語を明るくします。
お弁当を持って教室に来る姿は可愛らしく、少し強引で、でもどこか放っておけない魅力があります。
一方で、序章で感じた不穏さが完全には消えず、明るい学園生活の裏に何が隠れているのか気になりました。
優しい日常、ゆがんだ関係、記憶の隙間に残る違和感。
可愛いだけでは終わらない青春ものが好きな人に読んでほしい作品です。