フィンドレーとマーサの掛け合いと、絶妙な関係に引き込まれます。元詐欺師という肩書だけれど、フィンドレーは多分『人たらし』で。ひとの心の中のガードを下げるのが、生まれながらにうまいのか、成り上がっていくなかでうまくなったのか?とにかくうまいんだと思う。だから、読んでいるとそのフィンドレーの『人たらし』の魅力に引き寄せられて、気がつくとどんどんページを巡っていたし、クライマックスでは、マーサと一緒に祈ってました。
時代や国の詳しい設定はありませんが、おそらくは中世のどこかの国で、王が毒殺されようとした! 調査に乗り出したのは元詐欺師の男爵とうら若い新人侍女、しかし魔の手は……というお話です。元詐欺師の男爵の軽口にめげず迷わず突き進む新人侍女には勢いを感じます。事件が完全解決に至らなかった点を編集部様がどう捉えるかが、ネックかと思います。
処刑台から始まる宮廷ミステリー。フィンドレーとマーサの間に積み重なる信頼がいい。嘘を見抜く男と、本音を隠せない侍女。正反対の二人が、敬意と信頼から距離を縮めていく描写が丁寧です。そして事件では、人は分かりやすい筋書きを真実だと思いたがる。その心理が冒頭の処刑台へどう結びつくのか、最後まで追いたくなる物語です。