再生数二桁の底辺心霊系配信者・火野透が三年かけてようやく出会った“本物の幽霊”。
しかしその幽霊は、なぜか怯えていた――
この違和感の一言が、物語全体の空気を一気に不穏へと傾ける。
答えを求めて訪ねた民俗学者・河原澪が告げる言葉、
「心霊スポットでいちばん怖いのはな、幽霊やないんよ」
この瞬間、作品は心霊ホラーから“民俗学ミステリー”へと姿を変える。
忘れられた魂を見届けて送り返す“染み送り”という行為は、
ただの除霊でも供養でもなく、
人の記憶や土地の歴史に染みついた“痕跡”を扱う繊細な儀礼として描かれる。
底辺配信者とワケあり民俗学者という異色コンビが、
怯える幽霊の背後に潜む“影”の正体へ迫っていく過程は静かで、じわじわと怖い。
そして、忘れられた魂を送る二人の背後で、
“染み”を喰らう影が静かに伸びているというラストの一文が、
物語の奥に潜む大きな闇を予感させる。
幽霊よりも怖いものがいる。
それは人の記憶か、土地の呪いか、あるいはもっと別の何かか。
民俗学×心霊×ミステリーが絶妙に絡み合う、静かで深い怪異譚。