猫を象徴として崇める宗教、アニマ教団。
白猫のテクオが訪れたその聖地には、
「非民によって穢された」とされる湖がありました。
けれど――本当にそうなのか?
町の人々が信じていること。
教団が語ってきた歴史。
聖者を選ぶ奇妙な儀式。
湖を取り巻く者たち、それぞれの言い分。
読み進めるほど、「当たり前だと思っていた前提」が少しずつ揺らいでいきます。
そして起こる、湖が真っ赤に染まる不可解な事件。
ここからが面白い。
一見、独特なSF世界を彩るための設定に思えた宗教の教義や儀式、大聖堂の構造、湖の性質までが、次々とミステリのピースへ変わっていくのです。
謎が解かれていく爽快感はもちろんあります。
けれど本作で特に心に残ったのは、その先でした。
誰が「正しい」のか。
何が「浄く」、何が「穢れて」いるのか。
人が信じ続けてきたものは、本当に真実なのか。
そんな問いまで、事件の真相とともに静かに浮かび上がってきます。
それでも物語が重くなりすぎないのは、白猫テクオと黒猫ホームズの軽妙な掛け合いがあるから。
危なっかしく事件へ首を突っ込むテクオと、遠隔から容赦なく推理を投げてくるホームズのコンビも、とても楽しい。
猫×SF×宗教×ミステリ。
こんな組み合わせでなければ成立しない謎が、ここにあります。
「不浄湖」という名前の意味が、読み終えたとき少し違って見える。
そんな一作でした。