物語の着想を得た時、「インスピレーションが降りてきた」とは、昔からよくいったものです。
あるいは「アイデアが湧いてくる」ともいいます。
着想が、もしかしたら物語そのものが、自分の感覚を越えた先から勝手に現れた現象としかいいようのない瞬間なのでしょう。
この時、書き手はただ書き写しているだけかもしれない。
いえ、これは作るのではなく、描いているというべきでしょう。
これによって物語の世界や登場人物に生命力が宿る。
書き手にとって、この上なく面白い時間だと思います。
本作は、端的にその体験を綴っています。
むしろ端的であるからこそ、執筆に求める哲学が素直に伝わってきます。
「生きた物語を描く」
その楽しみと矜持に私は共感を覚えます。