"人間はいつも、考えすぎる"
少年少女が語るようなやわらかい文体にもかかわらず真意・本質を突く鋭さは、まるで心を針で刺されるような想い。よかれの愛情が反比例するように日々重くなる重圧は、当の本人しかわかり得ないことだろう。そこを同じ人間だから逆に受け止められない・・・だからこそ"人間はいつも、考えすぎる"のかもしれない。
"朝が来る時、いちばん最初に出てくる色だよ。"
これは本当にそのとおりなのだけど、毎日の忙しさで人間が忘れている、美しさ。
そして光を失った彼女にとってはあまりにも重い。
そんな抱えきれない重さを(亡くなった)愛犬ならわかってくれるーー
人にわかってもらいたいのに、
人にわかってもらいたくない…
誰もが抱えてきたであろう複雑な悩みを、人間以外の誰かに救いを求めた経験がある人であれば、リクの存在があまりにも眩しく映るかもしれない。
かくいう私も、同じだ。
かつて19歳だった私がこれを読んだら、やわらかく、心に針を刺されるほど印象的で自分の心や身近な人を想っただろう。そんなお話です。
私は5年前、愛犬を亡くしました。その日は土曜日で、私も妻も休み、夜勤の多い息子も夕方帰って来て、県外へ嫁いだ娘も里帰りしていました。家族が珍しく揃った日の夜を選んで、その子は逝きました。明日は日曜日だから皆で埋葬してねと。
この子はどんな思いで死んでいったのだろう。どんな気持ちで毎日暮らしていたんだろう。私たちのことをどう考えてたんだろう。しばらく、そんなことばかり思いました。
これは、まさにそんなペットを愛する人のストーリー。亡くなったペットとの再会。擬人化により、ペット自身が語るという設定。
人ではないものへの確かな愛情。小さな、でも尊い命への思い。それらがいっぱい詰まっています。
ペットロスの方も、それ以外の方も、心地良い涙を流したい方はぜひ。
まだ連載中ですが、密かに最終回のことを心配してます。絶対一人で読もうと思います😢。
本作は、生きることの悩みや命の重みをテーマを取り扱いつつ、そのテーマに押しつぶされないようにあたたかく丁寧に描かれた作品となっております。
作中では、葛藤、死という選択を、正面から丁寧に向き合う、読み手の琴線に触れるエモーショナルな構造となっています。
単なるファンタジーというカテゴリに収まってはおらず、かつて愛したペットとの絆を通じて、愛おしさと切なさが同居した舞台設定を構築されているのが、作者様の手腕だと思います。
多くの読み手に共感される、失いかけた命の温もりを再び紡ぎ直していく、涙と救いの現代ファンタジー。
心の機微を描く作品が好きな方はぜひお読みいただければと思います。
おすすめいたします。
「もう朝が来なくていい」と思っていた紬が、生と死の境にある不思議な駅で、亡くなった愛犬リクと再会するという導入がとても秀逸でした。迎えに来たのではなく「追い返しに来た」というリクの台詞に、この作品が描こうとしているものが端的に表れています。
過去への切符を通じて、言えなかった言葉や守れなかった約束と向き合っていく構成は丁寧で、ペットとの絆や死別というテーマを、感傷だけに流れず前向きな視点で描いているのが印象的です。リク視点の描写には、人間とは違う温度の優しさがあり、それが作品全体の説得力を支えています。
短い話数の中で気持ちが急ぎ足になる瞬間もありますが、大切な存在を失った経験がある人には、静かに刺さる一作だと思います。