妖艶で力強く、それでいて儚い魔女たちの物語である。冒頭、娼館から逃げ出した主人公の少年を一人の魔女が助ける。美しきその魔女エルメディナは大型バイクを操るハリウッド俳優よろしく、暴れ箒と魔法杖を駆使して悪漢たちを退ける。伯爵家の令嬢である彼女は何故か主人公を知っており、当主たる弟の家で彼を庇護する。
エルメディナはかつて家庭教師の魔法使いがその恋人の魔女クレセンティアと殺し合いの末相打ちになった場面に居合わせており今なおその影を引きずっているのだが、このクレセンティアがまた自らの野望のために美しさを武器に力ある男たちに近づき、やがて本気で恋をしたのち破局し憎しみ合い殺し合うという凄まじい女性である。
さらに、主人公は元々主家の当主である男爵の義母に娼館に売られたのだが、その義母を放逐し主人公を探していた男爵の妹ヴィオレッタも魔女であり、彼女もこれまた可憐ながらも強い。もう心配はないから戻ってこいという彼女に主人公が戻らないと宣言すると、攻撃魔法を使ってでも連れ帰ろうとするほどに。
このように次々と魅力的な魔女が現れるのだが、そもそも主人公が男爵家に戻らない理由もバレバレなのだ。男爵がエルメディナにぞっこんなのを「あんな無愛想のどこがいいんだ」と言いながら、実は自分が一番エルメディナの側を離れたくないのである。
さてそんな魔女たちは実は一つの種族であって、古代種魔法使いと呼ばれる両性具有の存在から魔女の祖が出現し子をなすようになってから、魔女と魔法使い(男性)という二つの性が生まれた。この世界の魔女たちは力を持っており、そもそも現代魔法使いの祖は魔女である。にもかかわらず家の当主は(おそらく)男性に限られており、美しく力ある彼女たちといえど社会的には男性に依存せざるを得ないことが見て取れる。先のクレセンティアも然りであり、なかなか嫁がず自ら老嬢と自嘲するエルメディナにしても同様である。悪い男に引っかかるなどしてシングルマザーになった魔女(だけではないが)の互助組織まであるほどだ。そしてこの互助組織の魔女たちの切なる願いが、表題の赤い魔法杖を巡る一大騒動をもたらし、主人公ギデオンも巻き込まれていく。謎あり、アクションあり、魔女たちそれぞれの魅力ありの本編をぜひお楽しみいただきたい。
作者朝吹様が描かれる魅力的な殿方は今回も健在である。ただ、とにかく本作は女性陣に注目されたい。ちなみにわたしはエルメディナ様一択である。ギデオンくんと同じだ……。
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