プリントの裏側に透ける「A判」の文字。その瞬間に指先がこわばり、紙の端がわずかに湿る。
中学生のころの、あの言語化できない優越感と後ろめたさが、ひりひりと肌を撫でていきます。
私たちはいつも、数字や判定という分かりやすい記号で、安心を買おうとします。
主人公の朗誠もそうでした。
けれど、親友の死によって、その記号はあっけなく意味を失う。
二学期の始業式。
まとわりつく脂汗。
生温い水道水。
道端に落ちた、もげた蝉の羽。
この作品は、悲しみや絶望といった安易な感情ラベルを使いません。
ただ、不快な体温と重い空気の連続だけで、主人公に空いた穴の深さを、読者の体に直接伝えてくる。その手つきが見事です。
親友は、なぜあの日、校門に立っていたのか。
残された彼が、これからどうやって本当の痛みに追いつくのか。
息をひそめて、最後まで見届けようと思います。