SF的視点から描かれた、人類の未来を描いた『ホラー』です。飽くまでも『ホラー』なのです。それも人類全体に降りかかるという、いや、自覚していないだけで、とっくに物事は動き始めているのかもしれません。会議室で行われるやりとりは、それを社会的としても掘り下げることに成功しており、『復活の日』(小説)や『博士の異常な愛情』(映画)といった、いろんな物語が連想させられています。一種の怖いもの見たさ、で拝読しても、十分楽しめる。でもそこが一番恐ろしいのかもしれませんね。
有名な生態学実験「ユニバース25」を、AIが支配する近未来社会にスライドさせてみせる導入の説得力が凄まじく、読者を一気に物語の世界へ引きずり込む力を持った傑作です。「人類の幸福の最大化」という善意の命令が、結果として「精神的な去勢」を導き出すというプロットが非常に合理的で、それゆえに回避不能な絶望感を際立たせています。
AIによって最適化された世界が、気づかぬうちに「生の衝動」そのものを奪っていく過程が非常に緻密に描かれており、終始緊張感が途切れませんでした。 ユニバース25の比喩と現代社会の延長線としてのリアリティが強く結びついていて、読後も思考が止まらない作品でした。