夜中、ふと窓の外を見たら、謎めいた洋館に住むお隣さんが帰ってきた。しかも目が合ったと思ったら、いきなりパントマイムを始めてしもた――そんな、ちょっと変わった出会いから始まる現代ファンタジーやね。
最初は「変な人かも」と距離を取ってた主人公も、毎晩披露される大道芸を見てるうちに、だんだんその時間を楽しみにするようになっていくんよ。パントマイムにダンス、ジャグリング、それから言葉を使わへん小さなお芝居。窓を挟んで眺めてた二人の距離が、少しずつ縮まっていく様子がなんともあったかい。
不思議なお隣さんと過ごす時間には、ちょっと笑えて、ちょっと首をかしげたくなるような魅力があるんよ。題名の『ピエロとクラウン』も含めて、この出会いがどんな景色を見せてくれるんか、そこは物語の中で楽しんでほしいな。
■ 夏目先生――推薦文
人と人とが親しくなるには、まず挨拶をして、自己紹介をして、当たり障りのない話でもする。普通ならそう考えます。
ところが、この物語の隣人は少々違います。窓の向こうから見ている相手に気づいて、彼が始めるのは大道芸なのです。
わたくしは、この出会い方がたいへん気に入りました。
主人公は最初から隣人を信用しているわけではありません。むしろ少し警戒しております。それは当然でしょう。夜中に見知らぬ隣人と目が合い、突然何やら始められれば、誰でも一度は窓を閉めるべきか考えるものです。
しかし、面白い芸を見せられると笑ってしまう。
人間は用心深いようでいて、案外こういうところが頼りない。けれど、その頼りなさがあるからこそ、人は他人と仲良くなれるのかもしれません。
本作で魅力的なのは、この二人の距離が大げさな出来事によって縮まらないところです。
夜になる。隣人が帰ってくる。主人公が見る。隣人が芸をする。また次の夜が来る。
その繰り返しが、いつの間にか二人の関係を変えてゆきます。最初は窓を隔てていたものが、少しずつ近づいていく。その変化を作品は長々と説明せず、二人が一緒に過ごす時間そのもので見せてくれます。
また、大道芸という題材が単なる珍しさで終わっていないところも面白い。
パントマイムをはじめとする芸には、言葉を使わずに何かを伝えるものがあります。本作もまた、すべてを言葉で説明する作品ではありません。読者へ渡すべきものを置いたら、あとは少し黙っている。その慎ましさが、この短い物語によく似合っています。
題名に置かれた「ピエロ」と「クラウン」という二つの言葉も、読み進めるうちに、この作品らしい不思議な余韻をまとってゆきます。詳しいところは、実際に読んで味わうのがよいでしょう。
手品を見る前から種を聞かされて喜ぶ人も、そう多くはありますまい。
972文字という長さも、この作品にはよく似合っています。短いから物足りないのではなく、短いからこそ、書かれていない部分をこちらが想像する余地がある。読み終えたあと、物語の外側へ思いを伸ばしたくなる掌編です。
奇妙な隣人を眺めながら、いつの間にかその帰宅を待つようになる主人公。その小さな変化には、相手への素朴な関心が少しずつ親しみに変わってゆく様子があります。
人は、いつ親しくなったのかを案外うまく説明できないものです。気づけば待っている。気づけば笑っている。そうした人間の可愛らしいところを、不思議な物語の中でそっと楽しませてくれる一作です。
■ ユキナ――推薦メッセージ
ほんのひと息で読める物語の中にも、読み終わってからもう少し考えていたくなる作品ってあるんよね。この一作も、そんな掌編を探してる人にはよう合うと思う。
不思議なものが好きな人はもちろん、派手な事件よりも、人と人との距離がゆっくり変わっていく話が好きな人にもおすすめやで。短いからこそ、自分で想像できる場所がちゃんと残ってるんよ。
お隣さんが次に何を見せてくれるんか。その小さな期待を、主人公と一緒に追いかけてみてな。
ユキナと夏目先生(猫の縁側 ver.)
※ユキナおよび夏目先生は、GPT-5.6による仮想キャラクターです。
なお、自主企画の参加履歴を「読む承諾」の確認として扱っています。