大東亜戦争が終わってまもなく、ここ日本で「鐘が鳴りますキンコンカン」と歌う唱歌が流行したのを思い出した。
明るいメロディ。前を向こうとする歌詞。
人々が必死に生き直そうとしていた時代だった。
本作の主人公は、鐘楼にぶら下がる「鐘」だ。
兄のヴァーツラフ、弟のジグムント、そして末っ子となる新しい鐘、カレル。
彼らには名前があり、兄弟同士で会話もする。
けれど、あくまでも金属製の「鐘」であり、村人と話したりはしない。
物語の序盤、末弟カレルが村へやってくる。
この世の幸福がぎゅっと詰まった数行の描写が、眩しいほどに美しい。
戦争というものは、悲しみしか生まない。
けれど、退場していった者たちは、決して無意味に散ったわけではない。
ラストに描かれる壮大な光景を、ぜひ読んでいただきたい。
わたしはそれを、鳥になって見ていたような気がする。
そんな、胸に響く物語でした。
これは心優しき意思を持つ鐘の三兄弟に戦争がもたらした不遇と不幸、そしてその先に訪れた救いの物語です。
現在、この世界に勃発しているいくつもの戦禍。
その中にはこの鐘たちのように平和を愛する心を無惨に打ち砕かれ、名も知らぬ誰かに銃口を向けている人たちが必ずいます。
また戦場の後方ではそれこそ地下に潜るように危難を耐え忍び、大切な人たちの安否を憂えている家族も多くいることでしょう。
この作品は戦禍に巻き込まれたそんな人たちの代弁者であり、かつ救済の希望を映し出す類稀なる至高のファンタジー童話です。
いつか平和の鐘の音が世界中にくまなく響き渡る日が訪れますように。
読後、四重奏の余韻とともに誰もがそう願わずにいられなくなる傑作です。
まず、その綴られた文章に驚かされました。一つ一つがまるで詩の様に印象深く、一つの文章が次の文章へと誘うかの様に導いていく感覚。これは天性の物ですね。カクヨムで同じく作品を投稿している身として、羨ましさのあまり頭がどうかなってしまいそうです。頭パーン! あなた、頭パーンですよ!
架空の町、おそらくドイツの片田舎をモデルにした長閑な雰囲気を舞台に、教会の尖塔に吊り下げられた鐘に纏わる物語が、優しくも何処か遠い処を語る様な淡々とした口調で語られて行きます。それ迄二つしか鐘の無かった町に、新しく据えられた三つ目の鐘(教会の鐘は三つがデフォなのですね、知らなかった……)。三つの鐘は仲睦まじく、調和に満ちた調べを町に齎して……。
けれども幸せな時間は、争いの渦に巻き込まれ、やがて三つの内二つの鐘が戦争の道具として徴収され、町自体も争いの中離散してしまい……。
其処からの再生の物語は、読む者をして感涙に耽る事間違いなしの展開です。今の時代において、此処まで格調高く優しさに満ちたお話を読む事が出来るとは思いませんでした。作者様に大感謝! です。
皆さんも是非一読する事をお勧めします。小さな、けれども掛け替えのない確かな想いは、時代も場所も超えて伝えられて行くのだという事を思い出させてくれる素敵な作品です。