アレは中学生のころ。
美術の時間。
粘土で、見本の芸術作品を模倣しろというお題が課せられた。
題材は、
『コペンハーゲンの物憂げな人魚姫像』
思春期真っ只中の男子たちは、思い思いの人魚姫を形にした。
バストにこだわる者。
ウエストにこだわる者。
ヒップにこだわる者。
尾ビレにこだわる者。
中には、完成しかけた粘土細工を床に叩きつけ、
『こんなの、おれの人魚姫じゃない!!!』
とエキセントリックな芸術家、そのまんまのアーティスティックな者もいた。
人は、自分の理想を追い求める。
その理想を、形にしようとする。
バストの先に、乳首を付ける者が現れた。
デカルチャ〜😳!
ソレは、タブーじゃないのか?
辺りは、騒然とした。
このお作品。
幼いころ、母に連れられて歩いた縁日で出会った、飴細工の金魚。
主人公の康雄は、職人の手で作られた見事な金魚の飴細工に魅せられる。
本物よりも、美しく見えた。
その経験が、彼を突き動かす。
芸術とは、時にタブーに触れるモノ。
タブーに触れる危うさは、その代償として、真実。
求めるモノへ導く。
彼の求めたモノとは。
ぜひ、お読みになって、確かめてください。
【レビューコンテスト応募】
本作は叙情的な物語を抑制された語り口で淡々と描く短編である。
本編を貫くのは〝飴〟
美しさ象徴する、硬く甘く透き通った菓子だ。
幼少期、飴細工の金魚に魅了された康雄は飴職人を志す。
修行に入る康雄。
作中に彼の心理描写は少ない。
寡黙に職人として、コツコツと努力を積み重ねる。
そんな姿が淡々と描かれているだけだ。
読む者は真面目に仕事に努める彼を温かく見守りながら物語を読み進めることだろう。
その景色が一転する描写を読んだ瞬間。
書かれていたすべてが、ぐるりと回る。
金魚の食紅の赤。
りんご飴の構造。
すべてが不穏に繋がる。
結末の露骨なまでの語らなさ。
それが、怖さとなる。
本作は、甘さがいつまでも舌に残るような美しい余韻を持つ傑作である。
文芸作品としての完成度さえ高い。
読まない選択は勿体ない。
切にそう思う。
極上の耽美があなたを待っています。
もう本当に! たまらんです。
個人的に、この作者さまには定期的に(?)「こういう言い回し自分でもしたかった!」とか「自分でもこんなことが書けたらなぁ」とか「なーんでこんなこと思いつくんだろう」と思わされるのですが、今回は「まさにこういうの書きたかった!」でした。新しいの出てきました。
もうほんっと……。……いえ、あまり騒いでもいけないので、深呼吸しますね。
さて、美に耽るような作品はお好きですか?
ちょっと、くらい感じがして、どこか湿っぽくて、哀愁がただよってて、主人公が盲目的な作品。
「好き」でしたらまっすぐ本篇へ、「どうなんだろう?」と悩まれたなら、どうぞ本篇へ。
──極上の耽美が、あなたを待っています。
「本物よりも美しく見えた」のキャッチコピーが、いくつもの意味を持つ、極上の耽美が。