本作のジャンルは何かと問われると、悩みます。
小説のようで、少し違う。物語のある長い詩。散文詩でしょうか。自分は本作を拝読した時、ストーリーのあるミュージックビデオを思い浮かべました。あれを文字という媒体で描いているようだと。
選び抜かれた言葉で紡ぎ出す情景は美しい。まさに魔法で、綴られた言葉が色鮮やかで幻想的な光景を思い浮かばせる。
自分はとくに踊り子のシーンと踊り子と魔女が一緒にワルツを踊るシーンが好きで、綺麗な踊り子さんが音楽に乗って舞い踊り、自分まで夢に浸っているような感覚に陥りました。
そして文章自体には、歌っているようなリズムがあります。
自分はリズムを付けて文章を読むところがあるのですが、本作のリズムは素晴らしい。とんとんとん、くるりころり、しゃららんらん……オノマトペがそのリズム感をいっそうよく引き立ててくれています。
ストーリーとしては、前半と後半にわかれており、前半は色と音に溢れた夢の世界のような情景で、後半はまず真っ白で空虚感ある世界が描かれ、そのあと黒く静寂のある世界→だんだん現実感のある色鮮やかな世界……と読者を飽きさせず、かつ惹き付ける視覚的・聴覚的変化があります。これをじつに巧みに描き出しているのですから、作者様の筆力の高さには唸らされます。
もちろん、これらはレビューをしている自分の想像です。言葉を見て、想像して、自分の言葉に置き換えているだけ。台詞はなく、多くを語ってはいないので、人が見れば別の世界が思い描かれるかもしれません。(ネタバレになるため伏せた)ストーリーも、人によってさまざまな解釈を施すことでしょう。
言葉は魔法で、想像が言葉を生む。
本作のストーリーラインはこの一行で、この一行だけを記した作者様の本当の意図は分かりません。けれども、この一行が本作すべてを表しているように思います。
おすすめです。
未読の方はぜひ、文字で音と色を描きあげた芸術品をご覧になってみてください。魔法に掛けられたような気分になるかもしれません。