本作は尼僧となった女の心理を追う短編小説である。
筋立てを詳しく書くことはできない。
なぜなら、本作はその構造がミステリー小説と同様であるからだ。
読む者はある種の緊張を持って本作を読み進めることだろう。
印象に残るのは。
タイトルおよび、作中に象徴的に示される鈴の音。
仏教で邪念を払い、御仏への御知らせともなるその響きが、物語を区切るように鳴っている。
作中に具体的な事物は具に出ない。
その土地の名も寺の名も登場人物の名もない。
ただ役割のように書き割りのように置かれているだけだ。
具に書かれるのは、その衣類や見出しなみといった外見。そして胸中の心情だ。
あたかも逃亡犯の日々の心理を描くかのように。
あたかも服役囚の悔悟の日々を綴るかのように。
刻々と揺れ動く心の動きが記されている。
本作は、事の成り行きを余さず伝えるように主人公だけに視点を据える。
同時に寓意的であり奇縁を感じさせる仏教説話のように淡々と語る。
様々な要素を持つ本作は、なにより恐怖小説である。
そして。
多くの方に、ご一読をお勧めしたい優れた作品である。