第5話

「ほらほら!遠慮しないで!一気に飲んじゃって!」

 ……かなりまずい。スラム街で変な人に捕まったと思ったら、怪しい酒場に連れて行かれた。この後黒服のマッチョに脅されてとんでもない金額を払わされるんじゃなかろうか。

「あの……俺、そんなにお金持ってなくて……」

「いーのいーの、これはアタシのオゴリだから!」

 女性の圧に押されてぐいっとビールをあおる。うう……こんな状況なのにおいしい。

「ところでさあ、なんであんたこんな土地に来ちゃったの?なんかやらかしちゃった?警察から逃げてるとか?」

 あながち間違いではない。だがそんな事を言えるはずもなく。

「いやいや……!なんとなく立ち寄ってみただけですよ。全然やましいことなんてありません!」

「ふーん……」

 女性は俺をじいっと見ている。いや、俺が抱えている荷物をみているのか?まさか荷物を盗るつもりなのだろうか。

「あんたさあ、顔に出すぎだよ。アタシのこと、スリか詐欺師とでも思ってるでしょ?」

「いや、そんなことはありませんよ!」

「じゃあなんでそんなにカバンをがっちり抱えこんでいるんだい?」

 自分ではそんなつもりはなかったのだが、いつの間にか力が入っていたらしい。中にいるスライム、潰れていないだろうか。

「……」

「ねえ!」

「あっ!すみません。ぼーっとしてました。」

「そんなにカバンが大事?」

「いや、まあ……はい。」

「そうだよね。だってその中には研究所の人工生命体がいるんだもんねえ。」

 ん?いまなんて言ったんだ?研究所とか人工生命体とか言わなかったか?

「あんた、スライムをかくまってるんでしょ?ここでみんなにバラしてやろうか?」

 カバンの中身を知っているらしい。まずい。まずいぞこの女性は……この女は。脂汗が額に浮かんでくる。流石に人の目が多すぎるからスライムも出てこれない。

「コッチの世界ではスライムに懸賞金がかかっててさ。みんな目ぇギラつかせてんのよ。」

「へ、へえー……そうなんですね……」

「あんたも一緒でいいからさ、ちょっと来てよ。田中正一クン。」

 名前までバレている。口では頼んでいる感じで言っているが、イエスと言わざるを得ない状況だった。

「は、はい……」

 酒場の店主に目配せをし、俺を店の裏へと連れて行く女。そのまま階段を降りていった先にそれはあった。

「ようこそ!ウチの事務所へ!狭いところだけどゆっくりしていきなよ。」

 ドラマとかでよく見る危ない組織の事務所そのものだった。テンプレ通り、奥の黒い椅子にボスらしき老いた男が座ってる。

「ボス!連れてきたよ!こいつが例の……」

と言いながら俺のカバンをひったくり、チャックを開けてみせる女。中からドロドロとしたカラフルなスライムが飛び出す。

「スライムだ!」

 嬉々としている女。それを敵意マシマシでみるスライム。

「田中さん、逃げましょう!ここは危険です!」

 言わずもがな、俺は逃げるつもりだった。が、そんな考えは甘かったようで。

「ごめんなあ、あんちゃん。もうとっくに扉は施錠させてもろてんねん。おとなしくしといてなあ。」

 男が口を開いた。逃げられない。このままスライムは煮るなり焼くなりされて、俺は口封じに鉛玉を頭に食らうことになるのだろうか。覚悟しながら男の次の言葉を待つ。

「あんなあ、スライム君。」

 次の言葉はなんだ?俺のために捕まってくれへんか?あたりだろうか。

「ウチで働かへん?」

「「……へっ?」」

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濃硫酸は脱水作用が凄い話 @isonosuke

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