タイトルに「呪い」とあるので少し身構えたのですが、読んでみると、そこにあったのは怖さではなく、好きになってしまった気持ちの厄介さと、どうしようもない甘さでした。
風邪をひいて弱っている鷹乃辺さんと、その世話を焼く隼水さん。
薬、おくすり手帳、チョコレート菓子、ティッシュの場所。
そうした日常の細かな描写がとても自然で、二人がただ特別な言葉を交わすだけではなく、生活の中にちゃんと相手の存在を置いていることが伝わってきました。
隼水さんは優しいのに、素直に優しいとは言わない。
少し棘のある言葉を投げながら、それでも必要なものには気づいていて、結局ちゃんと手を伸ばしてくれる。
その不機嫌さの奥にある独占欲や照れが、とても可愛くて印象的でした。
鷹乃辺さんも、弱っているからこそ少し甘えが見えて、普段とは違う距離の近さが出ているのが良かったです。
「助けて」と言える相手がいること。
そして、それを言われた側が嬉しくなってしまうこと。
この二人の関係性が、会話の端々からじんわり伝わってきます。
「呪い」という言葉の意味が、読み終える頃にはまったく違って見えるところも素敵でした。
怖い呪いではなく、相手を好きになって、気になって、頼られたくなってしまう気持ち。
短い中に、二人のこれまでと、今の距離感がぎゅっと詰まった、甘くて少しじれったい短編でした。