「人の感情が色で視える」異能を持つ名家の令嬢と、裏路地育ちの護衛。設定だけ見ればよくある主従ラブストーリーですが、この作品が光っているのは、その”よくある”を丁寧な筆致で血の通ったものにしている点です。
「主従」の建前を崩さないよう振る舞いながらも、素の顔を少しずつ見せ合っていく澪と真人の距離の縮め方は、大きな事件に頼らず、日常の軽口の積み重ねだけで読ませてくれます。スープを飲ませるための攻防、ガキ扱いされて頬を膨らませる令嬢の姿――このじれったさは、間違いなくこの作品の一番の武器です。
個人的にとても好きなのが、執事の榊さんです。多くを語らないのに、一瞬の仕草や言葉選びだけで、長年仕えてきた主人への忠誠と気遣いがにじみ出ていて、読むたびに好きになっていくキャラクターでした。
中でも出色だと思ったのが、12話の”追憶”のシーン。とても読み応えのあるサスペンスに驚かされました。専務の凝り固まった劣等感と歪んだ確信が、言葉の断片で畳みかけるように立ち上がってくる構成は、緊迫感の作り方として非常に完成度が高いです。
この技術がすでにあることを知ると、これからのアクション描写にも大きな期待が持てます。この作者さんなら、身体が動く一瞬をコマ送りのように切り取る書き方で、きっとこの作品ならではの緊迫したアクションシーンを描けるはずです。
欲を言えば、今後、榊さんと真人さんが澪さん抜きで彼女について語り合う場面も見てみたいです。二人の”保護者”だけの会話から見える、また違った澪さんの姿がありそうな気がしています。
じれったさと甘さ、そして丁寧なキャラクター描写。この先の二人の関係の行方が、とても楽しみな一作です。
【レビューコンテスト応募】
他人の感情を色として見る能力を持つ……それ故に対人においては気疲れが激しく、また名家の跡取りという立場もあって常に気を張り「ふさわしさ」を求められる少女。
そんな彼女が、裏社会から拾ってきたぶっきらぼうな護衛の前でだけ年相応の女の子としての顔を見せることができる……この関係性にきゅんきゅんしますね!
護衛の方も言葉足らずで不器用ながら、おせっかいなオカンみたいに接するものだから、調子を崩されてしまうところも愛らしいです。
そんな二人の関係が行き着く先はプロローグで描かれています。こんな嫉妬全開になるまでにどんな物語があるんだ!?
もの凄く楽しみですね。
先にお伝えすると、内容や方向性、書き方、バズる、売れる、みたいなことは評価も含めて僕はしない主義です。
その上でお伝えしたいのは、一生懸命、少しずつ、書き進めてきたような、一文字、一文字を丁寧に組み立て、余白も含めて、綺麗に言葉を並べることができているという印象を受けています。
これは僕個人がそう思うだけで、プロの編集の方、または他の方がどう思うかはわかりません。ただ、僕はあなたのファンになりました。あなたの読者です。
まだ始めたばかりで不安になるかもしれませんが、文章力や表現力は続けること、努力と思わずに楽しみつづけることで自然と向上しますので、安心して、あなたの世界をたくさんの人に届けてください。
ライター目線で考えても、特におかしい、ここは変だ、というのもありませんでした。
最後に、素敵で綺麗な作品を僕に届けてくれて、本当にありがとう。
あなたの作家としての素敵な生き方を、これからも応援させてくださいね。