一番の魅力は、各巻の冒頭に置かれた講談調の口上です。「さて次なるお話は、芸事の世界で起こった不可思議事件。未練を残して殺された、師匠の想いを受け取って……」という語り口は、単なる装飾ではなく、江戸の情緒を一気に立ち上げる仕掛けとして機能しています。落語や講談への造詣の深さが伝わってくる文章で、テンプレート的な導入とは一線を画しています。「継ぎは傷じゃねえ」という亡き父の言葉を胸に、女だてらと言われながらも腕を磨く椿の芯の強さも、金継ぎという題材そのものと重なって、説得力があります。
一方で、話と話の繋ぎには、やや唐突さを感じる箇所もありました。たとえば一の巻3話は椿が器の声を聴いた瞬間で終わり、4話は「突然涙を滝のように流し始めた椿」という描写からいきなり始まります。読者は一瞬、何が起きたのかを自分で補完する必要があります。
この点、実は解決策はすでに作品自体が持っています。各巻の開幕に見せている、あの講談調の一文を、各話の冒頭に1〜2行だけ添えてみてはどうでしょうか。たとえば2話の冒頭に「場面は先のお話の続きでございます。一人になった椿は、それでも気分が落ち着かないようで。」
4話は「なんとまあ、椿には品物の声が聞こえたのでございます。悲しい身の上話を耳にして、椿は滂沱の涙、涙。」といった具合です。
これなら場面の飛躍を自然に埋めながら、この作品最大の武器である語りの個性を、毎話楽しませることができます。
時代劇への愛情を、単なる舞台設定として借りるのではなく、語り口という文体レベルにまで落とし込んでいる点が、この作品の一番の熱源だと感じました。この先、椿自身の出自(亡き母の形見の家紋、住職が語る「奥方様によく似ている」という言葉)がどう回収されていくのかも楽しみです。
【レビューコンテスト応募】
「物に宿った声が聞こえる金継ぎ職人のヒロイン」と、「剣術も卓抜な旗本の若様」との、和風ロマンス……情景・心情の描写が巧みで、本当に面白いです!
物語の注目ポイントは「巻(章のようなもの)の区切りごとに違ったジャンル」を感じること。怪談的な御話や、時には剣戟アクションまで堪能できる……ちょっとしたオムニバス形式のようでもあり、飽きさせない構成になっていて惹き込まれます。
読者さんごとに「三の巻が好き」といった違いも出てきそうで、興味深いですね……!
それでいて、共通するのが「巻のラストで感動させてくる」ことと……「ヒロイン(椿さん)とヒーロー(慧之進さん)の恋愛が少しずつ発展していく」という、揺るがぬ大黒柱!
しっかりとした芯が通っているから、安心して読み進められつつ、二人の関係の進展が楽しみになるのですよね……!
強い想いの宿った物は付喪神の如く、それぞれ特徴的な事件を起こし、それを解決していくバディものとしての面白さ。
少しずつ発展していく恋愛事情がじれったく、だからこそ気になり、思わずニヤニヤしてしまう情緒……。
改めて、本当に面白かったです。是非ともご一読、おすすめ致します!
【レビューコンテスト応募】