空っぽだった「僕」の世界が、クラゲみたいに掴みどころのない少女との出会いで少しずつ色づいていく——タイトルにもなった「水」というモチーフが、関係性そのものの比喩として全篇を通じて機能しているのが印象的だ。
目次が「出会い」「部屋」「水族館」「海」と章単位で積み重ねられていく構成は、二人の距離が縮まっていく過程をそのまま空間の移動として可視化していて巧みだ。あるレビュアーが評するように、青と白を基調にした透明感のある世界観が一貫しており、特に喫茶店から水族館を見つめる場面の表現に滲む儚さは、十代特有の未完成な美しさをすくい取っている。「あの日までは」という一文が予告する不穏さが、穏やかな日常描写の裏にずっと潜んでいるのも読みどころだ。
完結済み・全20話、4万7千字というひと夏の物語に相応しいコンパクトな尺。クラゲのように脆く透明な恋を、最後まで丁寧に見届けたい一作だ。