読み始めたときには、ごく普通の光景だと思っている。
家族の死だったり、子供たちの遊びだったり、人生の一場面だったり、恋の告白だったり。
ところが読み進めるうちに、何かがおかしい。
そして、その「おかしい」の正体が見えた瞬間、それまで読んできた文章の意味まで変わってしまう。
そんな不思議な感覚を何度も味わわせてくれる作品集です。
特に面白いのは、奇抜な設定そのものを説明しすぎないこと。登場人物にとっては、それが彼らの日常だからです。読者だけが少し遅れて世界のルールに気づき、「そういうことだったのか」と置いていた前提をひっくり返される。
しかも、ただ意外なオチをつけるだけではありません。タイトルや何気なく置かれた言葉、身近な物が、読み終わるころには最初とは違った意味を持って見えてきます。
奇妙で、可笑しく、ときには残酷。それなのに、どこか人間臭い。
一話が短いからこそ、その反転の切れ味がよく効く作品集でした。