――本日、私たちが旅するのは、『悠遠のルルオラヴェ』。
車窓の向こうには、どこか懐かしく、それでいてまだ誰も知らない世界が広がっています。
「悠遠」という言葉が示す長い時の流れ。
その中で息づく人々の暮らしや想いが、ゆっくりと景色のように流れていきます。
この物語は、派手な出来事だけを追いかける旅ではありません。
一つひとつの出会い、一つひとつの選択を積み重ねながら、世界の輪郭を少しずつ映し出していきます。
登場人物たちもまた、それぞれの過去や信念を胸に、自分だけの道を歩いています。
その姿は、窓の外を過ぎていく風景のように静かで、だからこそ心に残ります。
目的地へ急ぐ旅も悪くありません。
けれど、ときには車窓から流れる景色を眺めるように、ゆっくりと物語を味わう時間もまた贅沢なものです。
それでは皆さま、次のページという名の駅まで、どうぞ良い旅を。
深海魚を愛する研究者のユーガは、近未来の世界でAI搭載の深海探査船で深海を単独調査し、やがて彼は異世界へと迷い込む。
まずSFとしての導入が秀逸で、彼が頼るのは、自らのサバイバル知識と、深海生物の特性を記録した『深海生物大図鑑』という点に惹かれました。
ユーガは冷静で合理的、それでいて深海生物の話になると異常な情熱を見せるところも魅力的です。
肝がすわってそうそう動揺しない彼が、科学的思考と深海生物への愛を武器に、魔界の脅威へ立ち向かっていく。
小鬼たちとの戦闘や、戦闘による異変の描写は圧巻で、読みながらどんどん物語に引き込まれました。
研究者らしい姿勢で事態と向き合うため、問題解決に独特の説得力が生まれているところも素敵です。
まだ拝読の途中ですが、先行きがとても気になります。
そんな浪漫のある「深海SF」であり「異世界サバイバル」の物語をぜひお楽しみください。
プロローグの密度が高い。近未来、AI技術で個人の深海探査が可能になった世界、パーソナル深海潜水調査船「カナロア」を相棒に太平洋水深1万メートルを単独で潜るユーガ・ヴェルヌ——この設定だけでSFとして十分に成立している。そこへ未知の生物発光パターンと「ビオトワング」と呼ばれる音響信号が加わり、誘われるように深淵へ向かう。深度計が物理法則を無視して20,000メートルを超え、ホワイトアウトする。
「大丈夫やって。僕の船なんじゃし」という一言で、このキャラクターの全部がわかる。危険だと警告するAIに対して岡山弁でこともなげに言ってのける研究者の飄々とした胆力が、後の「深海生物の機能美で魔界をねじ伏せる」という物語の核と完全に一致している。
「バグ祓い」の論理×物理バディ、「盲点くん」の視覚生理学、「ローリング・ストーン」の笑いと涙——丸ニ十ノ字氏が短編で見せてきたものが全部、この連載に注ぎ込まれている。ミツクリザメの超高速射出機構、ヌタウナギのバイオセメント、深海生物の「過剰進化」を武器とする設定の発想の豊かさは、深海生物への本物の愛着がなければ出てこない。
毎日更新・連載中29話。このラノWEB大賞応募中。丸ニ十ノ字氏の全作品の中で、最も長く付き合える一作だ。