スマホの通知と速度に追われ、息苦しさを抱える14歳のリアルな心理に、冒頭から深く共感して引き込まれました。おじいさんの古い平屋で触れる、万年筆のインクの匂いや、磨き上げたセルロイドから立ち上るハッカの香り。五感に直接語りかけてくるような丁寧で美しい筆致に、読んでいて自分まで深く深呼吸したくなるような心地よさを感じます。周りの速さに合わせなくていい、「自分の速度」で生きていいんだと、傷ついた心を丸ごと包み込んでくれるような、本当に温かくて素敵な物語です。