第21話 「ラベルを剥がす日」

「…最低なのはその不良どもな。水瀬が怖くなるの、当たり前じゃん。そんなことあったなら」


「…っ、でも、天馬くんは悪くないのに……」


「うん、悪くない」


即答だった。


「でも、水瀬も悪くないじゃん」


「……っ」


「トラウマってそういうもんじゃん。似てるだけで思い出したり、体が勝手に反応したり」


天馬くんはそう言いながら、フェンスに背中を預ける。


風で金色の髪が揺れた。


前なら、その見た目だけで怖いと思っていたはずなのに。


今はもう、少し違う。


「まあ…最初ビビられてたのは普通にショックだったけど」


「えっ」


思わず顔を上げる。


天馬くんはわざとらしく肩を落としてみせた。


「話しかけるたびに“ヒッ”てされるし?」


「〜〜っ」


耳まで熱くなる。


「そ、それはごめんなさい……っ」


「はは、冗談だって」


笑いながら、天馬くんは続ける。


「でもさ、ちゃんと理由聞いたら納得した」


その声は、驚くほど穏やかだった。


「水瀬、怖いのに、俺に〝描きたいと思った気持ちまで捨てないでほしい〟って背中押してくれて、ちゃんと俺と話そうとしてくれてたんだなって」


「……」


「だから俺、結構嬉しかったよ」


どくん、と胸が鳴る。


そんなふうに受け取られるなんて思っていなかった。


ただ失礼にならないように必死だっただけなのに。


「…僕、ずっと……」


声が小さく震える。


「派手な人って、みんな怖いって思ってた。世界が違うって、だから関わりたくないって」


「うん」


「でも…天馬くんは、違ったから……」


「違った?」


「…うん。僕の絵を見ても嗤わずに、否定もしないで、ただ褒めてくれた」


「…それが、なんか…っ、初めて、で…っ、僕、うれしくて……こんな人もいるんだって思って……」


「僕…天馬くんのこと「陽キャ」としてしか見れてなかったんだと思う。でも天馬くんはそんなことなくて」


「…ちゃんと、“僕”を見てくれてたから…」


「水瀬…」


「こ、怖いって決めつけてたの、僕の方だったのに…天馬くんは、最初から普通に接してくれてた」


「…だから最近、天馬くんといると、少し安心できるようになってきて……」


「前は、派手な人が近くにいるだけで苦しかったのに……今は、天馬くんと話す時間、嫌じゃないっていうか…むしろ、楽しみで……み、身勝手かもしれないけど…もっと、仲良くなりたくて…」


言った瞬間、恥ずかしくなって俯く。


すると隣で、ふ、と息を漏らす音がした。


「……マジで嬉しいこと言ってくれるじゃん、当たり前に仲良くするし」


「…えっ」

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