プロローグの一文から、鮮やかな世界が立ちあがる物語です。
創造から生み出された破壊。その果てに広がる世界が、豊かな言葉によって描きだされていく幕開けには、ぞくぞくするような魅力があります。
なにより印象的なのは、文章のうつくしさ。
光や冷気、金属の輝き。ひとつひとつの情景が繊細でありながら鮮烈に描かれ、まるでその場に立っているかのような感覚を覚えます。
人物の胸に宿る切なさも、情景と重なり合うように表現され、短い一文が深い余韻を残します。
さらに、戦闘シーンでは、映画を見ているかのような迫力が広がります。
静かな場面の美しさと、激しい戦いの躍動感。そのどちらもが、豊潤な文章によって生き生きと描かれています。
第一部までの読了ですが、言葉の美しさと描写の力が強く印象に残りました。
文章そのものを味わいながら、本格SF世界に浸りたい方におすすめしたい作品です。
プロローグ「Orphan File」の一文「この世界は、未来を諦めた」が全てを語る。
暴走した創造物たちによって人類が"未来を作ること"を恐れるようになった世界——その世界の底で、銀髪のサイボーグ少女との別れを記憶に抱きながら目覚める赤毛の少年アトリ。「涙が左目だけ」という一行だけで少女が機械と人間の狭間にある存在であることを伝える書き方が鋭い。
第1話ではアトリが軍の地下施設を脱走するアクションが展開される。頭の中に住む謎の声「シルバー」の指示に従い走りながら、「ぼくは人間なのか?」と自問する場面の緊張感がたまらない。身体が勝手に動く。記憶がない。自分が何者かわからない——そのまま雪の中に飛び出すラストが完璧な引きになっている。
「創造」と「違法」が矛盾なく共存する世界設定の骨格が、すでにプロローグと第1話だけで見えてくる。